top of page

休職期間満了による退職扱いの限界 —— JR東海事件から考える「会社を守る誠実なプロセス」

  • 岸和田THREE社労士事務所
  • 7月25日
  • 読了時間: 2分

JR東海(退職)事件


【判例概要】

JR東海の従業員が脳内出血で倒れ、会社の休職・復職判定委員会の判定に基づいて病気休職中であったが、本人の復職の意思表示にもかかわらず、三年の休職期間満了により退職扱いと決定された。これに対し右退職扱いを違法として従業員としての地位確認等を求めたケース。裁判所は、使用者は配置換え等により現実に配置可能な業務の有無を検討すべきであり、復職不能とした判断には誤りがあるとして、就業規則に基づく退職扱いを無効(請求認容)とした。(労働基準法第2章 / 労働判例771号25頁)


改めて考える、労働判例が突きつける実務の本質

現場で数々の労務管理や企業ガバナンスに向き合ってきた中で、この「JR東海(退職)事件」の判例について、改めてその重みを深く考えています。

就業規則に「休職期間が満了した場合は自動的に退職とする」と明記していれば、会社は当然に契約を終了できると考えがちです。


しかし、本判例が示している本質は、「就業規則の文字通りに処理したか」ではなく、「会社として、その労働者を残すための誠実な検討を行ったか」というプロセスの有無です。


会社の判定委員会や医師が「従来の業務(この場合は乗務員等)に戻るのは困難」と判断した場合であっても、裁判所は以下の点を冷徹に観察します。

  1. 従来の業務以外の「軽易な業務」や「配置転換」の可能性を具体的に検討したか

  2. 本人の意欲や回復状況に応じた、段階的な復職プランを模索したか

  3. それらの検討過程が、客観的な記録として残されているか


冷酷な処理ではなく、「誠実なプロセス」こそが防波堤になる

私傷病やメンタルヘルスによる休職トラブルにおいて、会社側が「規定通りです」と突っぱねてしまうと、後に地位確認請求(裁判)を起こされた際、非常に厳しい立場に立たされます。


本当に会社を守る労務管理とは、従業員を冷酷に切り捨てることではありません。

「会社としてどこまで配慮し、どこまで検討したのか」という誠実な観察と記録(ガバナンス)を日頃から積み重ねておくことこそが、結果として最大の法的な防波堤となります。


休職・復職の運用においては、規則の文面だけを追うのではなく、事案ごとの「プロセスの構築」を丁寧に行うことが求められます。



 
 

最新記事

すべて表示
【厚労省・最新公表】運送業の労基署監督指導結果(令和7年)を解説!違反率81.2%の実態と経営者が取るべき対策

2026年8月6日、厚生労働省より「令和7年に全国の労働基準監督署等が自動車運転者を使用する事業場に対して行った監督指導(立入調査)や送検等の状況」が公表されました。 2024年4月に「改善基準告示の改正」および「時間外労働の上限規制(年960時間)」が適用されてから1年が経過した時点での、リアルな監督指導の実態を示す重要なデータです。 今回は、公表されたデータから見えてくる「労基署が重点的にチェ

 
 
【2026年最新】「骨太方針」と「日本成長戦略」が閣議決定!経営者が知っておくべき労働法制・賃上げの今後

2026年7月21日、政府の合同会議にて「日本成長戦略」および「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太方針)」が閣議決定されました。 これらは、今後数年間における日本の経済・労働政策の「ロードマップ(指針)」となる極めて重要な決定です。 労働時間法制の見直し、最低賃金の引き上げ、社会保険制度の再編など、企業経営や人事労務に直結する項目が多数盛り込まれています。今回は、中小企業の経営者や人事担当

 
 

未来の常識を創造し、           

企業の全ての人を明るくする。

SNS更新しています
助成金受給額
簡易診断
大阪市中央区社労士

©2026 岸和田THREE社労士事務所 

bottom of page