従前、定年が55歳で、勤務に耐え得る健康状態の労働者は58歳まで在職することができたが、使用者が就業規則を変更し、定年を55歳から60歳に延長するとともに、
55歳以降の賃金を引き下げたため、55歳以降の賃金が54歳時の67 %に低下し、58歳まで勤務して得ることを期待することができた賃金額を60歳定年近くまで勤務しなければ得ることができなくなったことについて、就業規則の不利益変更の合理性が認められた事案。
(判決の要旨)
右にいう当該規則条項が合理的なものであるとは、当該就業規則の作成又ば変更が、
その 必要性及び内容の両面からみて、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認することができるだけの合理性を有するものであることをいい、
特に、賃金、 退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、 当該条項 、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、 その効力を生ずるもの と い うべきである。
右の合理性の有無は、 具体的には、 就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、 使用者側の変更の必要性の内容 ・ 程度、 変更後の就業規則の内容自体の相当性、 代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、 労働組合等との交渉の経緯、 他の労働組合又は他の従業員の対応、 同種事項に関する我が国社会における-般的状況等を総合考慮して判断すべきである。
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