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【経営者必見】フリーランス新法(取引適正化法)で企業が問われる法的責任とは?SNS募集時の「6情報明示」と「偽装請負」リスクを社労士が徹底解説

岸和田THREE社労士事務所
9月21日
読了時間: 8分

更新日:9月25日

はじめに:外注管理・フリーランス活用の「当たり前」が崩れた

昨今の深刻な人手不足や働き方の多様化に伴い、ITエンジニア、Webデザイナー、SNS運用代行、各種コンサルタントなど、個人事業主やフリーランスへ業務を委託する企業が急増しています。


しかし、「雇用契約ではないから労働基準法は関係ない」「業務委託だからお互いの合意さえあれば自由に契約できる」という従来の認識のまま外注管理を行っていると、思わぬ法令違反や行政指導、さらには損害賠償トラブルに巻き込まれるリスクが跳ね上がっています。


その背景にあるのが、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称:フリーランス・事業者間取引適正化等法/フリーランス新法)です。


本法では、これまでグレーゾーンに放置されがちだった事業者間の取引条件や就業環境について明確な法的ルールが整備されました。さらに、インターネットやSNSを通じた募集における「闇バイト」防止を背景とした厳格な情報開示義務や、実態が伴わない「偽装請負(労働者性)」への厳しい目が注がれています。


本記事では、厚生労働省の最新指導方針や公式リーフレットの重要ポイントを紐解きながら、企業側が直ちに点検・見直すべき実務上の対応策と、潜む経営リスクについて専門的な視点から詳しく解説します。


1. フリーランス新法の全体像と発注企業に課される基本的義務

まず前提として、本法における「特定受託事業者(フリーランス)」とは、従業員(※週20時間以上かつ31日以上雇用する者)を使用しない個人事業主や一人社長を指します。一方、これらに業務を委託する企業は「発注事業者(特定業務委託事業者等)」と位置付けられ、企業の規模や委託期間に応じて以下のような法的義務が課されます。


① 取引条件の明示義務(第3条)

業務委託契約を締結する際、直ちに「業務の内容」「報酬の額」「支払期日」「納入期限・場所」などの定められた取引条件を、書面または電磁的方法(電子メールやメッセージアプリ等)で明示しなければなりません。口頭での「とりあえずやっておいて」は即座に法違反となります。


② 報酬支払期日の設定・支払義務(第4条)

発注した成果物を受領した日(または役務提供を受けた日)から数えて60日以内のできる限り短い期間内で、支払期日を定めて報酬を支払う必要があります。自社の支払サイトが「末締め翌々月払い(60日超)」になっている場合は、契約見直しが必須です。


③ 就業環境の整備義務(第12条〜第14条)

一定期間以上の委託を行う場合、ハラスメント対策のための体制整備(相談窓口の設置や研修実施)、育児介護等と業務の両立に対する配慮、中途解除の事前予告(30日前までの予告または予告手当に相当する対応)などが義務付けられます。

SNSでフリーランスを募集する企業は要注意! 厚生労働省資料より
SNSでフリーランスを募集する企業は要注意! 厚生労働省資料より

2. SNS・Web募集時に直面する「必須6情報」の明示ルール(第12条)

近年、SNS(XやInstagram)やクラウドソーシング、自社Webサイトを通じて不特定多数のフリーランスや副業人材を募集する企業が増えています。ここで今、最も行政が注視しているのが「募集情報の的確表示義務(第12条第1項)」です。


厚生労働省の最新案内にもある通り、犯罪実行者の募集(いわゆる「闇バイト」)が社会問題化し、通常の求人・募集と誤認させる悪質な手口が横行したことを受け、募集時に提示すべき情報が厳格化されました。


募集時に必ず記載しなければならない「6情報」

インターネットやSNS等の広告によりフリーランスの募集を行う場合、以下の6項目を欠いた募集は「誤解を生じさせる表示」として第12条違反となります。


   


  1. 氏名または名称(発注元企業の正式名称)   


  2. 住所(本拠地・所在地の明記)   


  3. 連絡先(電話番号、メールアドレス、専用フォーム等)   


  4. 業務の内容(具体的かつ明確な成果物・役務の内容)   


  5. 業務に従事する場所(リモートワーク可否や作業場所)   


  6. 報酬(金額、算定基準、支払条件など)   


3. 実務で経営者が陥りやすい「4つの勘違いと落とし穴」

厚労省が公開しているQ&A資料からも明らかなように、企業側が「これで大丈夫だろう」と良かれと思って行っている運用が、実はそのまま法令違反に直結しているケースが後を絶ちません。   


自社の運用と照らし合わせながら、特に間違いやすい4つのポイントを確認してみましょう。


【落とし穴1】「住所は都道府県や市区町村までで十分」という勘違い

(Q1関係)

  • NGな運用: 「大阪府岸和田市」や「東京都中央区」など、概要の地域しか記載していない。   


  • 正しい実務: 応募者が誤解を生じないよう、ビル名、階数、部屋番号まで詳細に記載する必要があります。プライバシーやセキュリティを理由に省略することは認められません。   


【落とし穴2】「連絡先はSNSのダイレクトメッセージ(DM)でOK」という勘違い(Q2関係)

  • NGな運用: SNS上で「詳細はDMでお問い合わせください」とだけ記載して募集する。   


  • 正しい実務: DM送付だけでは連絡先を十分に表示したことになりません。電話番号、メールアドレス、または自社サイト上の専用問い合わせフォームへのリンクを直接示す必要があります。   


【落とし穴3】「自社HPの募集ページURLを貼っておけばSNS本文は省略できる」という勘違い(Q3関係)

  • NGな運用: X(旧Twitter)の投稿文には「Webデザイナー募集!詳細はこちら [URL]」とだけ書く。   


  • 正しい実務: URLリンクを貼るだけでは、投稿自体が業務委託の募集であることや全体像が伝わらず、誤解を招く可能性があります。投稿広告そのものに6項目(またはその主要要素)をしっかり記載した上でリンクを添える必要があります。   


【落とし穴4】「報酬や作業場所は『応相談』にしておけばいい」という勘違い(Q4関係)

  • NGな運用: 報酬欄を「経験・能力に応じて決定」「応相談」とだけ記載して具体性を排除する。   


  • 正しい実務: 確定額でなくとも、「月額40万円〜(経験考慮)」「作業場所:リモートワーク可(週1回出社あり)」など、募集時点で定まっている範囲・条件や目安の粒度で明確に示す義務があります。   


4. 新法よりもさらに重要な「偽装請負(労働者性)」の潜伏リスク

フリーランス新法の遵守も極めて重要ですが、労務管理・リスクマネジメントの観点から企業にとって真に致命的な打撃となり得るのが、「実質的な労働者性(偽装請負)」の認定問題です。


厚生労働省のガイドラインでも明確に示されている通り、形式的に「業務委託契約書」や「業務委託請負契約」を交わしていたとしても、実態として使用従属関係が存在する場合、労働基準法上の「労働者」と判断されます。


労働者と認定された瞬間、フリーランス新法ではなく労働基準法・労働契約法・最低賃金法・社会保険関係法令が遡及して適用されることになります。


「労働者」とみなされる典型的な判断基準

自社で外注しているフリーランスが、以下の項目に当てはまっていないか今すぐ点検してみてはいかがでしょうか。


  • 指揮命令の有無: 業務の進め方や手順について、自社の社員が日常的・具体的な指示を出している。


  • 時間的・場所的拘束: 「勤務時間は9時〜18時」「原則として自社オフィスに出社」など、時間や場所を厳格に指定・管理している。


  • 諾否の自由の有無: 企業側からの業務依頼や指示に対して、拒否する自由が実質的に与えられていない。


  • 代替性の有無: 本人以外の第三者が代わりに作業することが認められていない(専任性が極めて高い)。


  • 報酬の性格: 成果物に対する対価ではなく、「時間給」や「日給」のように労働時間や日数を基準に支払われている。


偽装請負と判定された場合に企業が負う「損害と賠償」

もし行政指導や裁判で「実質的な労働者」と判断された場合、企業は以下のような莫大なコストとリスクを背負うことになります。


  1. 未払い残業代の遡及支払(過去3年分):


    「業務委託だから残業代はない」という主張は一切通りません。過去に遡って時間外手当、休日手当、深夜手当の支払いを命じられます。


  2. 社会保険料の遡及徴収:


    健康保険・厚生年金保険の事業主負担分について、過去に遡って数年分を一括納付させられるリスクが発生します。


  3. 労災事故発生時の無保険責任:


    業務中の事故やメンタルヘルス不調について、安全配慮義務違反や労災補償上の重い責任を追求されます。


5. まとめ:トラブルを未然に防ぐ「予防的な労務再構築」を

フリーランス新法の施行および募集ルールの厳格化は、企業に対して「適正な取引と責任ある契約運用」を強く求める時代の変化そのものです。


単に「契約書を1枚作っておけば安心」「SNSの文章を少し直せば大丈夫」といった表面的な対応では、拡大するコンプライアンスリスクを抑え込むことはできません。


  • 既存のフリーランス契約書や発注プロセスの全面見直し


  • SNS・Web求人媒体における募集表現・必須情報の掲載チェック


  • 「業務委託」と「直接雇用」の切り分けおよび運用実態の是正


  • 発注担当者・現場責任者に対するハラスメント・コンプライアンス教育


これらを先回りして整備し、法令順守と組織づくりの土台を整えること(=予防的な労務再構築)こそが、企業を致命的な法的トラブルや社会的信用の失墜から守り、結果として優秀な人材やパートナーを引き寄せる最大の強みとなります。


自社の外注管理や募集運用に少しでも不安や懸念がある経営者・企業幹部の方は、手遅れになる前に一度、ご相談ください。


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