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【連載:令和8年版 労働経済白書から読む中小企業の未来①】

岸和田THREE社労士事務所
4 日前
読了時間: 5分

「実質賃金減少」と「過去最高の就業者数」から考える、これからの採用・定着戦略


厚生労働省が公表した『令和8年版 労働経済の分析(労働経済白書)』。

労働市場の最新動向や賃金・生産性の変化など、大阪府を含めた日本の「働く環境」に関する膨大なデータがまとめられています。


大阪市内や泉州エリアをはじめとする都市部・近郊地域でも、同様にパート・有期雇用の採用争奪戦が激化しており、人材の確保・定着は待ったなしの状況です。


今回から3回にわたり、この最新白書から中小企業の経営者・人事担当者の皆様が「今すぐ知っておくべきポイント」をピックアップし、実務でどう活かすべきかを解説します。


第1回のテーマは、経営者が最も頭を悩ませている「賃金と採用・定着」です。


1. データの影に潜む違和感:「人は増えているが、生活実感は厳しい」

白書が示した最新の労働動向では、一見すると矛盾するような2つの数字が並んでいます。


  • 就業者数・雇用者数が過去最高を更新

    (就業者数は過去最高の6,828万人、雇用者数も6,185万人(令和8年版白書))

    高い人手不足感を背景に、女性やシニア層の労働参加がさらに進み、日本の就業者数は過去最高を記録しました。


  • 高水準の賃上げの一方で、実質賃金は減少

    春闘等により現金給与総額は増加傾向にあるものの、持続的な物価上昇に賃金の伸びが追いつかず、実質賃金としては厳しい状況が続いています。


つまり現在の労働市場は、「働く人は増えて争奪戦が激化しているが、物価高によって従業員の生活防衛意識はこれまで以上に高まっている」という状態です。

令和8年版 労働経済の分析より
令和8年版 労働経済の分析より

2. 中小企業が直面する「採用と定着」の現実

この環境下で、中小企業が「大手と同じような一律のベースアップ」だけで競おうとすると、資金力で苦しくなるのは目に見えています。


だからといって賃上げを見送れば、「せっかく採用した社員が、より条件の良い他社や大手へ流出する」という離職リスクに直結します。


人手不足で業務が回らなくなり、残った社員の負担が増えてさらに離職が連鎖する——。

この悪循環を断ち切るために、中小企業には「ただ給与を上げるだけではない戦略」が求められています。



3. 今すぐ取り組むべき「3つの定着・採用アプローチ」

白書の分析を踏まえ、中小企業が取るべき現実的なアプローチは以下の3点です。


① 手当や基本給構造の見直し(ピンポイントな評価)

一律のベアが難しい場合でも、「成果や貢献度に応じた評価制度の導入」や「生活コストに配慮した手当の整理」など、自社の強みと課題に合わせた賃金体系の再設計が有効です。


② 労働時間の削減と有休取得(働きやすさの可視化)

白書でも年次有給休暇の取得率は過去最高を更新しています。

給与水準だけでなく、「残業が少ない」「休みが取りやすい」「テレワーク等の柔軟な働き方ができる」といった労働環境の整備は、求職者への強力なアピールになります。


③ 国の助成金制度を賢く活用する

パートや有期雇用労働者の賃上げ・正社員化を行う際、条件を満たせば費用の一部を支援する公的制度が存在します。

代表的で活用しやすいのが「キャリアアップ助成金」です。

キャリアアップ助成金は大きく分けて2つの柱(全6コース)があり、自社の課題に合わせて選択できます。

  • 正社員化支援

    • 正社員化コース: 非正規雇用労働者を正社員(勤務地・職務限定正社員等を含む)へ転換させた場合に支給

    • 障害者正社員化コース: 障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等へ転換した場合に支給

  • 処遇改善支援

    • 賃金規定等改定コース: 基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し適用した場合に支給

    • 賃金規定等共通化コース: 有期雇用労働者と正規雇用労働者で共通の賃金規定等を新たに規定・適用した場合に支給

    • 賞与・退職金制度導入コース: 有期雇用労働者を対象に賞与・退職金制度を導入し支給・積立を実施した場合に支給

    • 短時間労働者労働時間延長支援コース: 週所定労働時間を延長し、社会保険を適用させた場合等に支給


「ただ給与を上げる」のではなく、こうした助成金制度を就業規則や賃金規定の改定とセットで活用することで、会社の実質的な負担を抑えつつ、従業員のモチベーション向上と定着率アップを両立させることができます。


賃上げの原資をすべて自社の利益だけで賄うのではなく、公的支援を制度設計とセットで活用することが現実的な解決策となります。



総括:データを知り、自社の「武器」に落とし込む

「世の中全体で人が足りない」「物価が上がっている」という事実を嘆くだけでは、採用難も離職も解決しません。

重要なのは、最新の労働市場データから「求職者や社員が今何を求めているのか」を正しく捉え、自社の制度に反映させることです。


自社の賃金制度・就業規則の見直しや、賃上げ・環境改善に伴う助成金の活用方法についてご不明な点がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。



【次回予告】

連載第2回は、『【AI・IT活用】「AI導入×人的資本投資」で乗り切る中小企業の生産性向上』をお届けします。過去のIT導入期の教訓から、今中小企業が本当に投資すべきポイントを紐解きます。



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