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人材の定着とリスキリングを両立させる「教育訓練給付金」の戦略的活用

岸和田THREE社労士事務所
6月9日
読了時間: 5分

労働人口の減少と採用コストの高騰が続く現代のビジネス環境において、企業が持続的な成長を遂げるためには、「優秀な人材の確保・定着」および「既存社員のリスキリング

(学び直し)」が最重要課題となっています。


しかし、「社内研修や外部スクールの費用を会社側で全額負担するのは財政的に厳しい」「他社との差別化を図るための原資が不足している」とお悩みの経営者様も少なくありません。

このような経営課題を解決する一手として、近年改めて注目されているのが、雇用保険制度の「教育訓練給付金(通常型)」の戦略的活用です。

本制度は、企業の直接的な金銭負担を伴わずに従業員の主体的スキルアップを促せる極めて有用な仕組みですが、その恩恵を最大化し、かつ企業の採用ブランディングへ安全に組み込むためには、法的なインフラ整備と専門的な労務管理が不可欠となります。

本記事では、経営層が押さえるべき本制度の構造と、社労士が関与すべき重要性について解説いたします。


Ⅰ. 人材投資と労務リスク管理を両立させる「通常型給付金」の特性

国や自治体が主導する一般的な組織向けの助成金とは異なり、通常型の教育訓練給付金は、従業員が「自身の休日」や「退勤後の時間」を利用して自主的に学習を進めるという性質を持っています。この仕組みは、企業側にとって以下のような労務管理上のメリットをもたらします。

1. 労働時間管理および割増賃金リスクの排除

会社の業務命令として研修を受講させる場合、その時間が法定労働時間外であれば「労働時間」とみなされ、企業には割増賃金(残業代)の支払義務が生じます。これに対し、通常型給付金は従業員個人の「主体的なキャリア形成(私的活動)」に準ずるため、受講時間に対する賃金支払い義務等の労務リスクを完全に排除した状態で、社内の人材レベルを底上げすることが可能となります。


2. 被保険者期間の維持による従業員の不利益解消

一部の休暇連動型給付金とは異なり、この通常型(スクール代補助タイプ)は学費そのものに対する支援であるため、従業員の雇用保険の被保険者期間(加入期間)を消費・リセットすることがありません。将来的な失業手当の受給権等に一切の不利益を及ぼさないため、

企業側としても労務トラブルの懸念なく、社内での受講推奨や制度案内を行うことができます。


Ⅱ. 企業の持続的成長に寄与する対象講座の広がり

法改正に伴うインセンティブの強化により、現在では条件を満たすことで受講費用の最大80%(年間最大64万円)が国から受講者本人へ直接支給されます。対象となる講座(約1万6,000以上)は多岐にわたり、次世代の幹部候補育成や組織のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に直結するメニューが網羅されています。



  • 組織マネジメント・経営感覚の醸成: 「中小企業診断士」等のビジネス資格

  • 業務効率化およびデジタル化の推進: 最新の「AI・DX活用講習」「データサイエンス講座」

  • 事業活動に直結する専門技能: 「各種自動車免許(中型・大型等)」「各種専門国家資格」

  • 販路拡大・マーケティング機能の強化: 「WEB・SNSマーケティング実務講座」



一見すると従業員主導で完結する利便性の高い制度に思えますが、これを企業の「福利厚生」や「採用の武器」として公式に機能させるためには、クリアすべき法的なハードルが数多く存在します。


1. 雇用保険の適正な加入状況(コンプライアンス)の厳格な審査

本制度の適用は大前提として「雇用保険の被保険者であること」が条件となります。「週20時間以上勤務しているにもかかわらず、手続きの不手際や認識不足により加入漏れが生じている」といった状態のまま会社が制度を推奨した場合、従業員が受給できないばかりか、遡及加入や行政指導といった重大な労務リスクに直面することになります。事前に社労士による厳密な帳簿・労働実態の監査(労務診断)を行うことが必須です。


2. 「業務命令」と「自主学習」の境界線を定める社内規程の整備

従業員が自主的に学ぶとはいえ、資格取得を人事評価や昇給の条件に組み込む場合、制度の設計次第では「事実上の業務命令」と判断され、後々になって過去の学習時間に対する残業代を請求されるといった法的トラブルに発展するリスクを孕んでいます。これを防ぐためには、就業規則(賃金規程・評価制度)や社内ガイドラインを法的に強固なものへアップデートしておく必要があります。



🔑 結論:攻めの人材投資を行う前に、まずは守りの労務診断を

「教育訓練給付金」をインフラとして活用した採用・定着戦略は、コストを抑えて組織を強化するための極めて有効なアプローチです。しかし、土台となる労務環境が不安定な状態では、思わぬ法的リスクを誘発する引き金にもなりかねません。

  • 「現在の従業員の雇用保険の加入状況に法律上のミスのない確信が持てない」

  • 「トラブルを未然に防ぎつつ、制度を自社の人事・評価制度に正しく組み込みたい」

  • 「求人票の文面を精査し、他社の一歩先を行く採用ブランディングを構築したい」

当事務所では、企業の基盤を守る就業規則の改定や雇用保険の適正化から、攻めの人材育成の構築まで、総合的なコンサルティングを行っております。

制度の導入をご検討の経営者様は、トラブルを未然に防ぎ、最大の効果を得るために、

まずは一度ご相談ください。


 
 

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