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  • 【2026年最新】最低賃金が大阪1,231円・京都1,178円へ!関西の改定動向と経営者が取るべき10月までの対策

    2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金の改定について、厚生労働省の中央最低賃金審議会の目安(全国加重平均55円引き上げ)を受け、 関西各府県の地方最低賃金審議会から答申が出揃いつつあります。 改定の実施予定日は本年も10月1日が見込まれており、残された準備期間は約2ヶ月です。 今回は、大阪・京都をはじめとする関西主要エリア(兵庫・奈良含む)の改定額のポイントと、企業が今すぐ取り組むべき実務上の対策を整理してお伝えします。 1. 関西主要エリアの最低賃金改定一覧 今回の目安改定(大阪+54円、京都・兵庫・奈良+56円)を反映した、関西主要エリアの改定後の金額状況は以下の通りです。 都道府県 現行(改定前) 改定後(答申額) 引き上げ額 実施予定時期 大阪府 1,177円 1,231円 +54円 2026年10月1日予定 京都府 1,122円 1,178円 +56円 2026年10月1日予定 兵庫県 1,116円 1,172円 +56円 2026年10月1日予定 奈良県 1,051円 1,107円 +56円 2026年10月1日予定 ※滋賀県(1,080円→1,136円予定)、和歌山県(1,045円→1,101円予定)など、 近畿圏全体で50円を超える大幅な引き上げが続く見通しです。 2. 経営者が注意すべき点 今回の改定に伴い、実務上で特に注意が必要なのが以下の2点です。 ① 「時給制」以外のスタッフ(月給者)の割れチェック 最低賃金はパート・アルバイトの時給だけでなく、月給制の正社員や契約社員にも適用されます。 チェック方法: (基本給 + 対象となる手当) ÷ 1か月の平均所定労働時間 = 換算時給 ※役職手当や資格手当は算入できますが、通勤手当・家族手当・精皆勤手当・時間外手当などは最低賃金の対象外となるため除外して計算する必要があります。 ② 「賃金の逆転・格差縮小」に伴う現場の不満 最低賃金ギリギリのラインだけを引き上げると、「新人パートの時給と、勤続3年のベテランパートの時給がほぼ同じになる」という事態が発生します。 不公平感からモチベーション低下や離職に繋がるケースが多いため、最低賃金層だけでなく全体の賃金テーブル(給与体系)のバランスをどう維持するかが大きな課題となります。 最低賃金の対象となる賃金の範囲(厚生労働省). 出典: 厚生労働省 ★ ポイント 上図のように、最低賃金の判定で緑色枠(対象)に含まれるのは「基本給」と「一部の諸手当」のみです。 通勤手当・家族手当・精皆勤手当や残業代はすべて計算から除外しなければならないため、「額面(総支給)では足りているのに、手当を引いたら最低賃金割れしていた」というミスが非常に多く発生します。 3. 10月までに企業が取るべき3つの実務対策 改定までに残された時間で、優先して進めるべき対策は次の3つです。 賃金シミュレーションの実施 全従業員の給与データを抽出し、10月時点で最低賃金を下回るスタッフが何名いるか、引き上げた場合の人件費増加額がいくらになるかを速やかに算出する。 「業務改善助成金」などの活用検討 事業場内で最も低い賃金を引き上げ、同時に設備投資やITツール導入(省力化)を行う場合、国の「業務改善助成金」を活用できる可能性があります。事前の申請が必要となるため早めの点検が不可欠です。 就業規則(賃金規程)の見直しと周知 改定に伴い基本給や手当の組み替えを行う場合は、就業規則の改定手続きおよび従業員への説明を10月までに完了させておきます。 まとめ 近年の最低賃金引き上げは過去最高水準レベルが続いており、企業経営への影響はますます大きくなっています。 単なる「コスト増」として捉えるのではなく、価格転嫁や業務効率化、助成金の活用とセットで検討し、10月の発効に向けて余裕を持った準備を進めていきましょう。 ※出典:厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額の改定目安」および各地方最低賃金審議会答申 最低賃金の対象となる賃金|厚生労働省

  • 【厚労省・最新公表】運送業の労基署監督指導結果(令和7年)を解説!違反率81.2%の実態と経営者が取るべき対策

    2026年8月6日、厚生労働省より「令和7年に全国の労働基準監督署等が自動車運転者を使用する事業場に対して行った監督指導(立入調査)や送検等の状況」が公表されました。 2024年4月に「改善基準告示の改正」および「時間外労働の上限規制(年960時間)」が適用されてから1年が経過した時点での、リアルな監督指導の実態を示す重要なデータです。 今回は、公表されたデータから見えてくる「労基署が重点的にチェックしているポイント」と、企業が今すぐ取り組むべき実務対策を分かりやすく整理してお伝えします。 1. 監督指導結果の全体像(違反率は81.2%) 令和7年に全国の労働基準監督署がトラック・バス・タクシーなどの事業場(4,123事業場)に実施した監督指導の結果は以下の通りです。 労働基準関係法令違反あり: 3,346事業場(81.2%) 改善基準告示違反あり: 2,188事業場(53.1%) 重大・悪質な違反による送検件数: 67件 調査が入った事業場のうち、実に8割以上で何らかの法令違反が認められており、 非常に厳格な調査が行われていることが窺えます。 2. 主な違反事項(どこが狙われているか?) 公表されたデータによると、労基署が重点的に確認している違反項目には明確な傾向があります。 ① 労働基準関係法令違反のワースト3 労働時間(39.3%):時間外労働の上限超過や36協定違反など 割増賃金の支払(19.7%):残業代の計算不備や未払い 労働時間の状況の把握(6.3%):客観的な時間管理の不足 ② 改善基準告示違反のワースト3 最大拘束時間(40.2%):1日または1か月あたりの拘束時間上限オーバー 休息期間(28.3%):勤務間の休息時間(9時間〜11時間以上)の不足 総拘束時間(27.4%):年間の総拘束時間上限オーバー ポイント 「労働時間」と「最大拘束時間・休息期間」が違反の大部分を占めています。 デジタコ(デジタルタコグラフ)の記録と出勤簿・日報との整合性が厳しくチェックされている状況が浮き彫りになっています。 3. 「発着荷主」に対する要請と「荷主特別対策チーム」の動き 今回の発表で特に注目すべきは、運送事業者だけでなく「発着荷主等への働きかけ」についても明記されている点です。 長時間労働や拘束時間オーバーの背景には、荷主都合による「長時間の荷待ち(手待ち時間)」や「無理な配送スケジュールの指定」が存在することが少なくありません。 厚労省では都道府県労働局に「荷主特別対策チーム」を編成し、長時間の恒常的な荷待ちを発生させないよう、発着荷主に対して直接的な要請や周知を行っています。今や荷主企業にとっても、運送業者との取引環境見直しはコンプライアンス上の重要課題となっています。 4. 企業が今すぐ取り組むべき3つの実務対策 今回の結果を踏まえ、自動車運転者を使用する企業(および関連する荷主企業)は以下の点検を優先して行うことをおすすめします。 デジタコデータと労働時間管理の不整合チェック タイムカードの打刻時間と、デジタコの運行記録・タコグラフの始動/停止時間にズレがないか確認・是正する。 休息期間(勤務間インターバル)の確実な確保 シフト作成段階で、継続11時間(最低9時間)の休息期間が確保できているか再検証する。 荷待ち時間の記録と荷主との協議 荷待ちが発生している場合は記録を可視化し、発着荷主に対してタイムスケジュールの緩和や改善を協議する。 まとめ 度重なる指導に応じない重大・悪質なケースに対しては、すでに67件が「送検」という厳しい処置をとられています。 「これくらいは業界の慣習だから」と放置せず、自社の運行管理と労働時間管理の実態を客観的に把握し、早め早めの見直しと改善を進めていくことが重要です。 ※出典:厚生労働省「自動車運転者を使用する事業場に対する令和7年の監督指導、送検等の状況(令和8年8月6日公表)」 労働基準監督署等が自動車運転者を使用する事業場に対して行った令和7年の監督指導、送検等の状況を公表します|厚生労働省

  • 【2026年最新】「骨太方針」と「日本成長戦略」が閣議決定!経営者が知っておくべき労働法制・賃上げの今後

    2026年7月21日、政府の合同会議にて「日本成長戦略」および「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太方針)」が閣議決定されました。 これらは、今後数年間における日本の経済・労働政策の「ロードマップ(指針)」となる極めて重要な決定です。 労働時間法制の見直し、最低賃金の引き上げ、社会保険制度の再編など、企業経営や人事労務に直結する項目が多数盛り込まれています。今回は、中小企業の経営者や人事担当者が今押さえておくべき主要ポイントを分かりやすく整理してお伝えします。 1. 労働時間法制の見直し(2026年夏以降の動向) 今回の成長戦略では、柔軟で多様な働き方の実現と労働者の健康確保を両立させるため、 労働時間法制に関する具体的な検討スケジュールが示されました。 裁量労働制・変形労働時間制の見直し 現場の実態や労使双方の立場を踏まえ、長時間労働の防止や適切な処遇確保などの濫用防止措置を前提に、対象業務や運用のあり方の検討が進められます。 新たな働き方・勤務環境への対応 勤務間インターバル制度の法的位置付けをはじめ、「つながらない権利(勤務時間外の連絡制限)」のあり方、副業・兼業における健康確保、テレワークの活用促進などについて検討が行われます。 労働基準監督署の指導・相談体制 重大・悪質な事案には厳正に対応する一方、時間外労働の実態に応じた36協定の締結や柔軟な労働時間制度の活用について、「働き方改革推進支援センター」等と連携した相談支援の充実が図られます。 Point 2026年夏以降、労働政策審議会(労政審)での具体的な議論が順次スタートします。 2. 賃上げ環境の整備と最低賃金の方針 持続的な賃上げと中小企業の「稼ぐ力」強化に向けた施策パッケージも明記されました。 最低賃金の目標 2030年代前半までに全国平均1,500円の達成を目指し、労働生産性の向上面とあわせて官民での取り組みが継続されます。また、地域間格差の是正も重視されています。 実質賃金年1%上昇の定着 2029年度までに、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を「社会通念(ノルム)」として定着させることが掲げられました。 中小企業への伴走支援・取引適正化 価格転嫁の徹底、省力化投資(設備投資・IT化支援など)の推進、M&Aや事業再編を通じた生産性向上支援など、賃上げしやすい環境を整える施策が盛り込まれています。 3. 社会保障・労働市場改革のゆくえ 人手不足が深刻化する中、社会保障制度や雇用の仕組みについても中長期的な見直しが進められます。 雇用保険制度の再編 労働力供給制約に対応した雇用保険のあり方について、2026年内を目途に結論が得られるよう検討が進められます。 医療・介護等の制度見直し 高齢者の医療費窓口負担の原則や介護保険の自己負担割合の見直し、医療・介護・障害福祉分野における人材確保と他職種と遜色のない処遇改善の実現が掲げられています。 多様な人材の能力発揮(リスキリング) 処遇向上に向けたリスキリング支援や、女性・若者・就職氷河期世代などの就業・能力発揮に向けた環境整備が一層強化されます。 まとめ 今回の閣議決定は、すぐに全ての法律が変わるわけではありませんが、「政府がこれから数年間でどの方向を目指しているか」を示す明確な指針です。 労働時間の管理方法、就業規則の整備、賃金の引き上げ計画、社会保険の負担構造など、 今後の企業対応を見据え、自社の現行制度を定期的に見直しておくことが重要になります。 ※出典:内閣官房「日本成長戦略(令和8年7月21日閣議決定)」および内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026」 日本成長戦略本部/日本成長戦略会議|内閣官房ホームページ

  • 【国交省・令和8年7月最新】トラック運送業の「適正原価」議論がスタート!最低賃金増・人件費上昇を乗り越える労務・価格交渉戦略

    令和8年7月17日、国土交通省にて第1回「適正原価の設定に向けた有識者検討会」が開催されました。 2024年問題以降、トラックドライバーの労働時間規制(年960時間)や改善基準告示の強化が進む中、物流業界では人手不足や人件費・燃料費の高騰が大きな課題となっています。 今回の検討会は、令和7年6月に成立・公布された「トラック適正化二法」に基づき、国が定める「適正原価」の具体的な算定方法や方向性を固めるための重要な第一歩です。 これは運送事業者はもちろんのこと、発注側である荷主企業(製造・卸売・建設など全産業)にとっても、今後の取引価格や予算管理に直結する非常にインパクトの大きい動向です。 今回は、公表された資料をもとに、この制度が目指す背景と、経営者が今から押さえておくべきポイントを整理します。 1. なぜ今「適正原価」が必要とされているのか? 背景にあるのは、物流業界における価格転嫁の厳しさと、全産業平均に及ばないトラックドライバーの賃金水準です。 中小企業庁の調査等によれば、トラック運送業は価格転嫁が最も進みにくい業種の一つとされており、赤字企業の割合も約半数に達しています。その要因として、以下のような構造的課題が指摘されてきました。 発注者(荷主)との力関係による運賃の据え置き 多重下請構造(中抜き)の常態化 安価で無理な条件を引き受けるダンピング事業者の存在 こうした状況を改善し、ドライバーの適切な賃金確保と業界の持続可能性を高めるため、「法的に適正原価を定め、それを下回る取引を制限する」という抜本的な規制が導入されることになりました。 2. 「適正原価」の算定式と、新たに加わる重要要素 検討会で示された適正原価の算出イメージは以下の通りです。 適正原価 = 運賃原価 + 委託手数料 + 料金原価 + 燃料サーチャージ + 実費 従来の「標準的運賃」でも、全産業平均を踏まえた人件費や車両償却費、燃料費などが考慮されていましたが、今回の「適正原価」では、新たに2つの重要な費用要素が組み込まれる案となっています。 ① 輸送の安全確保のために必要な経費 価格競争によって安全対策が疎かにならないよう、独立した構成要素として盛り込まれます。 点検・車検費用や各種講習費だけでなく、ドラレコやデジタコの導入、任意保険料など、安全運行に欠かせない費用が評価対象となります。 ② 事業を継続して遂行するために必要不可欠な投資の原資 単なる拡大投資ではなく、事業許可基準を継続して満たすために必要な資金です。 人材の確保・育成、労働環境の改善、BCP(事業継続計画)への投資など、将来にわたって経営を維持するための費用が原価として認められる方向です。 3. 今後のスケジュールと「5年ごとの許可更新」への影響 この「適正原価」制度は、法律の公布から3年以内(遅くとも令和10年6月まで)に全面施行される予定です。今回の検討会では、2026年12月を目途に提言案を取りまとめるスケジュールが進められています。 ここで最も留意すべきは、将来的に「適正原価を下回る価格での受託・委託を継続した場合、トラック事業者の許可更新(5年ごと)が認められなくなるリスクがある」という点です。 単なる「目安」だった標準的運賃とは異なり、適正原価は事業の存続に関わる強力な基準(ハードル)となります。また、適正原価を下回る運賃を強いる悪質な荷主に対しては、行政による是正指導(トラック・物流Gメン等による要請・勧告・公表)の対象となります。 4. 社労士の視点:経営者が「今から」準備すべきこと この動きは、運送会社と荷主企業の双方に自社の労務・コスト構造を見直すきっかけを与えています。 運送事業者の皆様へ 最低賃金の改定や社会保険料の負担増など、人件費の上昇は今後も続きます。 「安さ」で勝負する経営から脱却し、自社の1時間あたり・1kmあたりの適正な運行原価(人件費・安全投資含む)を正確に試算・把握することが第一歩です。国が示す指標を根拠に、堂々と適正な運賃交渉を行える体制を整えていきましょう。 荷主企業(一般企業)の皆様へ 「運賃を安く抑えること」がリスクになる時代へ移行しています。不当な買いたたきはコンプライアンス違反や物流の停止(自社貨物が運べなくなるリスク)に直結します。 サプライチェーン全体で適正なコスト負担を受け入れ、自社・取引先双方の労働環境改善に協力していく視点が求められます。 まとめ 令和8年12月の検討会提言、そして今後の適正原価の告示に向けて、物流業界のルール改定は着実に前進しています。 「制度が変わってから慌てる」のではなく、自社の賃金体系や原価管理、取引条件の適正化に今から取り組んでいくことが、これからの時代に選ばれ続ける企業になるための鍵となります。 参考・出典資料(一次情報) 本記事で解説した検討会の詳細資料や関連法令については、下記の公的機関ページをご確認ください。 国土交通省 物流:第1回適正原価の設定に向けた有識者検討会 - 国土交通省 トラック運送業をとりまく現状及び最近の取り組み 002013675.pdf 標準的運賃について 002012605.pdf 適正原価の設定に向けた論点提示 002012606.pdf 今後の検討の進め方(想定)002012607.pdf 自社の就業規則の見直しや労務管理についてご相談・ご質問がある経営者様は、 お気軽にお問い合わせください。

  • 【経営者必見】高年齢雇用継続給付・育休手当の上限改定!定年後の賃金設計と労務対応の注意点

    厚生労働省より、令和8(2026)年8月1日以降に適用される「雇用保険の基本手当日額」や「各種給付金(高年齢雇用継続・育児・介護等)の支給上限額」の改定が公表されました。 今回の改定は、毎月勤労統計の平均定期給与額の変化に伴う見直しですが、「単なる労働者向けの手当変更」と見過ごしていると、定年後の賃金設計のズレや社内トラブルにつながる恐れがあります。 本記事では、経営者や人事労務担当者が今すぐ押さえておくべきポイントと、実務上の注意点を分かりやすく解説します。 1. 今回の改定内容のポイント(主要な上限額・下限額) 今回の改定では、全体として上限額・下限額ともに引き上げ(増額)となっています。 ① 高年齢雇用継続給付金(定年再雇用者向け) 支給限度額: 月額 386,922円 ➔ 397,369円(+10,447円) 60歳到達時等の賃金月額上限: 508,200円 ➔ 522,000円 ② 育児休業給付金・出生時育児休業給付金(パパ育休) 育児休業給付(支給率67%・上限): 月額323,811円 ➔ 332,454円(+8,643円) 育児休業給付(支給率50%・上限): 月額241,650円 ➔ 248,100円(+6,450円) 出生時育児休業給付(上限): 302,223円 ➔ 310,290円(+8,067円) ③ 雇用保険の基本手当日額(失業給付) 45歳以上60歳未満(上限): 8,870円 ➔ 9,110円(+240円/日) 60歳以上65歳未満(上限): 7,623円 ➔ 7,830円(+207円/日) 全年齢(下限額): 2,411円 ➔ 2,562円(+151円/日) 2. 経営者が特に注意すべき 「定年後の賃金設計」と「労務対応」 今回の改定に伴い、会社側で特に注意・対応すべきなのは以下の3点です。 注意点①:定年再雇用者の「賃金シミュレーション」の再確認 60歳以降も継続雇用する嘱託社員などの賃金設計において、「高年齢雇用継続給付」の支給を見込んだ給与体系を組んでいる会社は注意が必要です。 支給限度額が397,369円に引き上げられたため、会社が支払う基本給と給付金の合計額のバランスを再確認しておく必要があります。 「シミュレーションと実際の支給額がズレて社内説明と食い違う」といったトラブルを防ぐためにも、8月以降の支給対象月の確認が不可欠です。 注意点②:育休取得者への正確な説明による「エンゲージメント向上」 育休給付金の上限額が引き上げられたことで、比較的給与水準の高い社員が育休を取得した際の手取り減少幅が緩和されます。 社員から「育休中の手当はいくらくらいになりますか?」と相談された際、会社側が最新の上限額(支給率67%で月最大約33.2万円)を踏まえて正確に説明できることは、 社員からの信頼感(エンゲージメント)や安心感に大きく直結します。 注意点③:労務ソフトのマスタ更新とハローワーク提出書類の確認 8月1日以降に離職する社員の離職票作成や、各種給付金の申請手続きにおいて、自動計算される上限額が切り替わります。 自社で給与計算・労務ソフトを導入している場合は、8月改定のマスタ更新が正しく行われているか必ず確認しておきましょう。 3. まとめ:法改正・各種改定への迅速な対応が会社を守る 雇用保険や各種給付金の上限額は、毎年のように細かな改定が行われます。 「知らなかった」ことによる計算ミスや社内説明の齟齬は、従業員との信頼関係を損ねる原因にもなりかねません。 常に最新の労務情報をキャッチアップし、自社の賃金規定や労務手続に反映させていくことが重要です。 🔗 参考リンク(厚生労働省公式案内) 今回の改定に関する詳しい資料や、社内配布・確認用のリーフレット(PDF)は、厚生労働省の公式ホームページにて公開されています。 実務での確認や社内共有にご活用ください。 令和8年8月1日からの基本手当日額等の適用について|厚生労働省 雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ 001726934.pdf 高年齢雇用継続給付金 介護休業給付金 の受給者の皆さまへ 001728499.pdf 基本手当日額の計算式及び金額(令和8年8月1日~) 001726936.pdf 👉[お問い合わせ・ご相談はこちらから three-sr@outlook.jp]

  • 【7/28発表】令和8年度の最低賃金どうなる?目安公表で見えてきた「今からやるべき準備」

    前回は「プラットフォームワーカーと労働者性」という最新の労務テーマをお届けしましたが、今回は一転して、すべての事業者さまに関わる「最低賃金の改定」についてのお話です。 7月28日、令和8年度の地域別最低賃金改定に向けた「引き上げ額の目安」が中央最低賃金審議会より発表されました。 毎年この時期になると「今年はどれくらい上がるんだろう…」「自社の賃金体系は大丈夫かな」と気になっている経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。 今回は、発表された目安のポイントと、秋の発効に向けて今から準備しておきたいことについて、分かりやすくまとめてみました。 今年の引き上げ目安のポイント 今年の改定目安のポイントは、大きく分けて以下の3点です。 全国加重平均で「55円」の引き上げ目安 全国平均の時給は1,176円となる見込みです。昨年度の66円増に比べるとやや落ち着いたものの、引き続き高水準な引き上げ傾向が続いています。 地域によるランク別の目安 Aランク(東京・大阪など6都府県): 54円 Bランク(京都・兵庫・北海道など28道府県): 56円 Cランク(青森・沖縄など13県): 56円 地域間格差の縮小 地方(B・Cランク)の引き上げ目安を都市部(Aランク)より高く設定することで、地域ごとの賃金格差を縮小しようという意図がうかがえます。 ※なお、これはあくまで中央審議会の「目安」です。実際の改定額は、これから各都道府県の審議会で話し合われ、8月中旬〜下旬にかけて正式決定していきます。 秋に向けて、今から見直しておきたい3つのこと 正式な金額が決まり、実際に新しい最低賃金が適用されるのは今年(令和8年)の10月ごろになります。直前になって慌てないために、今のうちから少しずつ確認を進めておくのがおすすめです。 1. 支給手当を含めた「実質的な時給」の再確認 「基本給は最低賃金を超えているから安心」と思っていても、各種手当の扱いによっては計算方法が複雑になる場合があります。特に、固定残業代や各種手当を支給している場合は、最低賃金の対象となる手当・とならない手当(通勤手当や家族手当、皆勤手当など)を整理し、時給換算で下回っていないか確認しておくとスムーズです。 2. 扶養内・社会保険の加入条件(年収の壁)の意識 時給が上がることで、パートやアルバイトのスタッフさんの中で「扶養の範囲内で働きたい」「労働時間を調整したい」という相談が増える可能性があります。シフトの組み方や採用計画にも影響するため、事前にスタッフさんの働き方の希望をヒアリングしておくと安心です。 3. 業務効率化や公的支援策の検討 賃金引き上げに伴い、人件費の負担感が増す企業も少なくありません。政府も「業務改善助成金」などの支援策を用意しています。設備投資やITツールの導入で生産性を上げつつ、賃金引き上げを図る仕組みを上手に活用するのも選択肢のひとつです。 まとめ 最低賃金の引き上げは、経営者にとって人件費コストの増加という大きな課題であると同時に、「自社の労務体制を底上げし、採用力・定着率を高める絶好の機会」でもあります。 時給をただ上げるだけではなく、このタイミングで「適切な手当の設計」や「業務プロセスの見直し」をあわせて行うことで、人件費の膨張を抑えつつ、従業員の満足度を高める健全な労務管理が実現できます。 秋の正式決定・適用に向けて、自社の賃金構造のチェックや助成金の活用シミュレーションなど、準備を進めてみてはいかがでしょうか。 令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について|厚生労働省

  • 【社労士解説】プラットフォームワーカーと「労働者性」~厚労省・第6回研究会の最新論点と企業への影響~

    近年、ギグワーカーやプラットフォームワーカーをはじめとするフリーランス的な働き方が急速に広がっています。 これに伴い、「実質的には労働者なのではないか?」「労働基準法を適用すべきか?」という「労働者性(使用従属性)」の判断基準について、厚生労働省の「労働基準法における『労働者』に関する研究会」で議論が進められています。 今回は、2026年(令和8年)7月17日に開催された「第6回 労働基準法における『労働者』に関する研究会」の配付資料に基づき、その最新の実態と今後の見通しについて分かりやすく解説します。 1. なぜ今、「労働者性」の判断が問題になっているのか? 従来の労働基準法における「労働者」の判断は、昭和60年(1985年)の報告書に示された基準(昭和60年報告)がベースとなっています。 しかし、近年では以下のような変化が生じています。 アプリやAI(アルゴリズム)による業務割り当てやルート提示 対面での指揮命令がないフルリモートやギグワーク 勤務時間や場所は自由だが、評価システム等による実質的な制約 このような「新しい働き方」に対して、昭和60年の判断基準をそのまま当てはめることが難しくなっており、予見可能性(企業や働く人があらかじめ判断できること)を高めるためのルール再整理が求められているのです。 2. プラットフォームワーカーの実態調査から見えたリアル 第6回研究会の資料では、事業者やワーカーへのヒアリング結果(実態調査)が報告されました。従来の判断要素に当てはめると、以下のような実態が見えてきます。 昭和60年報告の判断要素 実態調査から見えた主な傾向 ① 業務オファーの拒否権 案件の拒否は原則自由であり、直接的なペナルティは基本的に見られない。 ② 指揮監督の有無 直接の指揮命令はないが、アプリによる目的地通知や安否・トラブル確認用のGPS活用などが行われている。AIの提示ルートは任意利用が多い。 ③ 時間・場所の拘束性 基本的に働く時間・場所は自由。ただしクライアントの要望による常駐案件も一部存在。 ④ 代替性(代理稼働) セキュリティや本人確認(顔認証等)の観点から、無断での代理稼働は制限されている。 ⑤ 報酬の性質 稼働時間に比例するケースと、需要や天候に応じた「動的価格(ダイナミック・プライシング)」によるケースに分かれる。 ⑥ 事業者性・専属性 業務端末や車両は自己負担が多いが、事故等の保険は事業者側が提供する傾向が増加。副業・掛け持ち層が多数派。 このように、従来の「典型的な労働者」とも「完全な事業主」とも言い切れない中間的な働き方が広がっていることが浮き彫りになりました。 3. 今後の法改正・議論の3つのポイント 研究会で示された「これまでの議論の整理(案)」では、以下の重要なポイントが議論されています。 ① 欧米・EUの動向(「労働者性の推定」規定など) 海外では、プラットフォーム企業に対して「原則として労働者と推定し、企業側が反証できない限り労働者として扱う」といった強力なルール(EU指令など)を導入する動きがあります。日本においてこのような仕組みを導入すべきか否か、罰則規定との兼ね合いも含めて慎重に議論されています。 ②「業務上必然な指示・拘束」の評価 例えば、「配送先を指定する」「安全のためのルールを守らせる」「演奏・運送の時間を指定する」といった行為は、注文者として当然の指示なのか、それとも労働者としての指揮監督なのか。これらをどう切り分けて評価するか(ニュートラルに扱うか)が議論されています。 ③ 行政(労基署)における判断基準の明確化 裁判まで行かなくても、労基署や企業の現場で「この契約は労働者にあたるのか?」を迅速かつ的確に判断できるよう、明確なガイドラインやチェックリストの策定が検討されています。 4. 企業・事業主が今から意識しておくべき対策 今後、厚生労働省からガイドラインの提示や判断基準のアップデートが行われる見込みです。業務委託や請負、サロンや配送などのプラットフォーム事業を運用している企業様は、以下の点に注意が必要です。 実質的な「指揮監督」になっていないかの見直し 契約書上は「業務委託」であっても、アプリの通知やチャット等で「細かい時間指定や作業指示」を過度に行っていないか確認する。 ペナルティや評価システムの透明性 業務拒否に対する不利益(アカウント停止や評価下げ)が実質的な強制力・拘束力を持っていないか整理する。 契約書と運用実態の一致 契約書の内容だけでなく、「実際の働き方(現場の運用)」が重視されます。定期的に現場の実態をヒアリング・点検することが不可欠です。 5. 「社労士の視点:今、企業に求められるガバナンス」 プラットフォームワークをはじめとする多様な働き方の進展に伴い、「業務委託か、労働者か」という境界線はより緻密に判断される時代に入っています。 「うちは業務委託契約だから大丈夫」と思っていても、実態によって「労働者」と判断された場合、過去に遡って残業代や社会保険の適用が求められるリスクもあります。 自社の業務委託契約のリスクを点検したい フリーランス新法や労働者性の最新基準に合わせた社内規定を作りたい といったご相談がございましたら、お問い合わせください。 労働基準法における「労働者」に関する研究会 第6回資料|厚生労働省 001725186.pdf (※2026年7月時点の厚生労働省「第6回 労働基準法における『労働者』に関する研究会」資料を基に作成しています。今後の法改正やガイドラインの動向に引き続き注目が必要です。)

  • 休職期間満了による退職扱いの限界 —— JR東海事件から考える「会社を守る誠実なプロセス」

    JR東海(退職)事件 【判例概要】 JR東海の従業員が脳内出血で倒れ、会社の休職・復職判定委員会の判定に基づいて病気休職中であったが、本人の復職の意思表示にもかかわらず、三年の休職期間満了により退職扱いと決定された。これに対し右退職扱いを違法として従業員としての地位確認等を求めたケース。裁判所は、使用者は配置換え等により現実に配置可能な業務の有無を検討すべきであり、復職不能とした判断には誤りがあるとして、就業規則に基づく退職扱いを無効(請求認容)とした。(労働基準法第2章 / 労働判例771号25頁) 改めて考える、労働判例が突きつける実務の本質 現場で数々の労務管理や企業ガバナンスに向き合ってきた中で、この「JR東海(退職)事件」の判例について、改めてその重みを深く考えています。 就業規則に「休職期間が満了した場合は自動的に退職とする」と明記していれば、会社は当然に契約を終了できると考えがちです。 しかし、本判例が示している本質は、「就業規則の文字通りに処理したか」ではなく、「会社として、その労働者を残すための誠実な検討を行ったか」というプロセスの有無です。 会社の判定委員会や医師が「従来の業務(この場合は乗務員等)に戻るのは困難」と判断した場合であっても、裁判所は以下の点を冷徹に観察します。 従来の業務以外の「軽易な業務」や「配置転換」の可能性を具体的に検討したか 本人の意欲や回復状況に応じた、段階的な復職プランを模索したか それらの検討過程が、客観的な記録として残されているか 冷酷な処理ではなく、「誠実なプロセス」こそが防波堤になる 私傷病やメンタルヘルスによる休職トラブルにおいて、会社側が「規定通りです」と突っぱねてしまうと、後に地位確認請求(裁判)を起こされた際、非常に厳しい立場に立たされます。 本当に会社を守る労務管理とは、従業員を冷酷に切り捨てることではありません。 「会社としてどこまで配慮し、どこまで検討したのか」という誠実な観察と記録(ガバナンス)を日頃から積み重ねておくことこそが、結果として最大の法的な防波堤となります。 休職・復職の運用においては、規則の文面だけを追うのではなく、事案ごとの「プロセスの構築」を丁寧に行うことが求められます。

  • 『労基署の立ち入り調査が変わった。2026年、経営者が知っておくべき最新リアルの裏側』

    「うちは昔からのタイムカードもあるし、労働条件通知書も揃えているから大丈夫」 もし経営者様がそうお考えであれば、大変酷ですが、現在の労働基準監督署(労基署)の臨検(立入調査)においては、その認識自体が最大の引き金になりかねません。 今、労働行政の現場で何が起きているのか。 法改正の定着と企業のデジタル化(DX)に伴い、監督官の調査手法はこれまでにないスピードで「激変」しています。 ネットに転がっているようなマニュアル対応では会社を守れない、2026年現在の臨検のリアルと、経営者が備えるべき真のガバナンスについてお伝えします。 1. 監督官が最初に開示を求める「生のデータ」 かつての臨検といえば、紙のタイムカードと賃金台帳を突き合わせる作業が主流でした。しかし現在、監督官が最も注力して確認するのは「デジタルのアクセスログ」です。 PCのログイン・ログアウト履歴 社内システムのサーバー操作ログ 入退館ゲートのセキュリティデータ 企業が勤怠管理システムを導入したことで、逆に「打刻時間」と「実際の稼働時間」の乖離(かいり)がデジタルデータとして完璧に証拠化される時代になりました。 「本人が勝手に残業していた」「自己申告で定時退社と書いてある」という主張は、客観的なログデータの前には一切の効力を持ちません。 行政は今、この「デジタルの乖離」をピンポイントで突き、是正勧告を行っています。 2. 「名ばかり管理職」と「チャット文化」に迫る刃 もうひとつ、現在の臨検で非常に厳しい追及が行われているのが、幹部社員や店長・課長といった「管理監督者」の範囲です。 人手不足や人件費高騰のなかで、名目上の役職をつけて残業代の支給対象外としているケースに対し、行政の審査基準は過去最高レベルで厳格化しています。 単なる肩書きではなく、「採用や予算に関する真の権限があるか」「出退勤の自由があるか」が徹底的に洗われます。 さらに近年増えているのが、SlackやLINE、メールなどの「業務チャットの送信履歴」です。 深夜や休日に上司から送られた一本のメッセージが、「指揮命令下にあった(=労働時間である)」と認定される事例が相次いでいます。表面上の契約書ではなく、「実際のコミュニケーションの実態」が見られているのです。 3. 臨検対応の本質とは「言い訳の手引き」ではない 臨検の通知が届いたとき、多くの経営者様が深い孤独と不安に包まれます。 しかし、ここで最もやってはならないのは、行政のマニュアル通りの正論を丸暗記して逃げ切ろうとすることです。 労基署の臨検対応の本質は、不備を隠すための「言い訳の手引き」ではありません。 自社の実情を正確に把握したうえで、法令の枠組みのなかでいかに会社と従業員を守り、 健全な組織へと着地させるかという「経営ガバナンスの再構築」そのものです。 行政の指導をただ恐れるのではなく、自社のリスクを正しく見極め、万が一の際には会社と経営者様の立場に立って共に寄り添う社労士が存在するかどうか。 当事務所が目指すのは、経営者様の決断に共によりそう社労士であることです。

  • 【令和8年最新】「シフト制」における雇用管理の留意点と有給休暇・休業手当の実務対応

    近年、パート・アルバイトを中心に「シフト制」での働き方が広がっています。 その時々の事情に応じて柔軟な時間設定ができるという労使双方のメリットがある一方で、勤務変更や休業時の対応などをめぐり、実務上の運用に悩まれる現場も少なくありません。 こうした背景から、厚生労働省は令和4年に策定された「シフト制の留意事項」を、令和8年6月に改正しました。 今回の改正では、特に判断が分かれやすい「シフト制労働者の年次有給休暇」の具体的な取扱いが明確化されています。 本記事では、経営者や労務担当者様が押さえておくべき実務上のポイントを客観的に整理します。 1. そもそもガイドラインにおける「シフト制」の定義とは? このガイドラインが対象とする「シフト制」とは、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間ごとに作成される勤務シフト等によって初めて確定するような勤務形態を指します。 ※あらかじめ就業規則等で勤務パターンが組み合わされている「三交替勤務(通常の交替制勤務)」などは、今回の留意事項の対象外です。 2. 労働契約の締結時に「書面」で明示すべきこと 労働契約の締結に際し、「始業・終業時刻」や「休日」を書面で明示することは労働基準法上の義務(労基法第15条)です。シフト制であっても以下のように具体的な明示が求められます。 「始業及び終業の時刻」 単に「シフトによる」とだけ記載するのは不足です。労働日ごとの始業・終業時刻を明記するか、原則的な時刻を記載した上で、契約締結と同時に一定期間分のシフト表等を併せて交付する必要があります。 「休日」 具体的な曜日が確定していない場合でも、「毎週少なくとも1回」または「4週間を通じて4日以上」など、休日の設定にかかる基本的な考え方を明記しなければなりません。 3. 【令和8年6月改正】年次有給休暇の取扱いがより厳格に 今回の改正のポイントは、シフト制労働者の年次有給休暇(有給)に関する取扱いの具体化です。雇用契約の時点で明記された条件に沿った適切な管理が求められます。 ① 週の所定労働日数を算出しがたい場合の算出方法 「あらかじめ働く曜日や日数を約束していない」という場合であっても、以下の実績値を用いて「基準日における1年間の所定労働日数」とみなして、比例付与(週の所定労働日数に応じた日数)の有給を付与する必要があります。 雇入れから6か月経過時点: 最初の6か月間の労働日数の実績を2倍した日数 雇入れ1年6か月経過以降: 前年の労働日数の実績 ② 有給取得時の賃金計算 有給を取得した日に支払うべき賃金について、時間給の場合は、「有給を取得した日(本来シフトが入るはずだった日)の所定労働時間×時間給」の支払いが原則です。 ※実際の勤務日(シフト日)と所定労働日数が乖離しないよう、会社の一方的な都合で所定労働日数を増減させることは認められません。 4. シフトカットと「休業手当」の支給基準 経営状況の変動や店舗の繁閑により、会社側の都合でシフトを減らしたり、いったん確定したシフトをキャンセルしたりした場合、「使用者の責に帰すべき事由」による休業として、平均賃金の6割以上の休業手当の支払い義務が発生する場合があります(労基法第26条)。 シフト確定前の段階であっても、「目安となる労働日数(例:月15日程度勤務)」等が労働契約で定められている場合、それに満たない日数を一方的に減らすことは休業手当の対象となり得ます。 シフト確定後のキャンセルは、労働条件の「一方的な変更」にあたるため、原則として労使双方の合意が必要です。 5. 円滑な運用のための「シフト管理ルール」の明文化 労使双方にとって予見可能性を高め、円滑な現場運営を行うためには、労働契約書や就業規則において、あらかじめ以下のような「シフトの作成・変更ルール」を話し合って合意し、明文化しておくことが望まれます。 シフト決定の通知期限と方法(例:毎月〇日までにメール等で通知する) シフト変更・キャンセル時の変更申請の手続と期限 一定期間中の「上限となる労働日数・目安となる労働日数・最低限の労働日数」 近年、労働基準監督署による調査等でも、パート・アルバイトの雇用管理状況や有給の管理体制、休業手当の支払状況は重視される傾向にあります。 法的なルールを整備することは、トラブルを防ぐためだけでなく、働く方が安心して力を発揮できる環境を整え、人手不足時代における優秀な人材の定着(リテンション)を促すための、企業経営における大切な取り組みの一つと言えます。 今回の最新改正を踏まえた雇用契約書の見直しや、現場の実態に即した就業規則の改定、 労務管理に関する専門的なサポートを行っております。 ■ 関連リンク いわゆる「シフト制」について|厚生労働省 ホーム|厚生労働省

  • 【行政最新トレンド】永住・長期滞在の要件へ?「日本語・生活学習プログラム(仮)」法務省PT報告書を読み解く

    令和8年7月3日、法務省は外国人が日本の制度やルール、日本語を体系的に学ぶ新制度の検討に関する「法務大臣政務官PT報告書」を取りまとめ、公表しました。 現在、我が国には410万人を超える外国人が在留していますが、一部のルール逸脱行為などが社会課題となる中、国が責任を持って「責任ある社会の一員」を育成するための社会基盤(インフラ)を作ろうという、非常に大きな動きです。 今後の外国人雇用や在留資格の手続きにおいて、すべての経営者・担当者が知っておくべき重要な方向性を客観的に整理します。 新プログラム創設の目的と背景 これまでも政府は動画やガイドブック(生活・就労ガイドブック等)を提供してきましたが、それらはあくまで「任意」の学習にとどまっており、認知度や学習の動機付けに課題がありました。また、受け入れ地域(地方公共団体)や企業による支援の水準に格差があることも指摘されていました。 今回の報告書では、これらを発展的に解消し、「国の責任」においてICTやAIを活用した双方向型の体系的プログラムを提供することが示されています。 実務上、最も注目すべき「在留審査への反映」 経営者や担当者、そして外国人本人にとって最も影響が大きいのが、この学習プログラムの受講状況が「在留審査の許可要件」として組み込まれる方向で検討されている点です。 特に以下の3つのタイミングでの反映が議論されています。 入国前・入国直後の初期審査 日本での生活に最低限必要な基礎ルールを学ぶため、入国前や入国後一定期間内の受講を求め、その状況を在留期間更新許可申請などの審査に反映させて早期受講を促す。 永住許可申請の要件化 我が国への永住許可申請を行う際、この学習プログラムの受講を「許可要件」とする方向で検討が進められています。 長期滞在(10年超)の在留申請への反映 永住申請をあえて行わずに10年を超えて長期滞在する外国人に対しても、一定の長期滞在を目的とする在留申請の際に、プログラムの受講を要件化することが検討されています。 さらに、永住許可や帰化の審査においては、単に「受講したかどうか」だけでなく、「内容をどれだけ理解しているか(理解度の確認)」まで踏み込む慎重な制度設計がなされる見込みです。 企業(受入れ機関)に求められる役割の強化 国が共通のICT教材やオンデマンド環境を整備することを前提としつつも、雇用企業に対しては以下のような、より踏み込んだ対応が求められる方針です。 就労目的の外国人を受け入れる機関に対し、外国人本人だけでなく「帯同家族」に対する学習支援も一層強力に要求すること。 外国人が仕事と両立しながら受講できるよう、勤務時間の調整や学習環境の整備、地域の多文化共生窓口(地方公共団体の対面講座等)への橋渡しを行うこと。 今後の見通し 本プログラムは、国民の安全・安心を確保しながら外国人が活躍できる環境を作るための「喫緊の課題」と位置付けられており、「まずは実施可能なところ(短期的にはICT活用等)から早期に運用を開始する」という方針が示されています。 まずは十分な試行期間を設け、有識者や地方公共団体からのフィードバックを得ながら本格運用へ移行していくスケジュールが想定されています。 企業様が今後の法改正や在留資格の要件変更に慌てることなく、 安定した外国人財の確保・定着を進められるよう、公的な情報に基づいたナビゲーションを行ってまいります。 ■ 関連リンク 外国人が日本語や我が国の制度・ルール等を学習するプログラムの検討に関する「法務大臣政務官PT報告書」(令和8年7月) | 出入国在留管理庁 (※実際の入管庁URL構造に準拠した形式ですが、掲載時は公式ページをご確認ください)

  • 【実務トレンド】育成就労制度の最新動向:タイ王国との初の協力覚書(MOC)が締結されました

    2027年4月の「育成就労制度」のスタートに向けて、国(出入国在留管理庁、厚生労働省、外務省、警察庁)の動きが本格化しています。 令和8年6月4日、政府はタイ王国(労働省)との間で、育成就労制度に関する「協力覚書(MOC)」を締結したことを発表しました。 新制度において、人材の送り出し国と正式に覚書を交わしたのは今回のタイ王国が初めてとなります。 現行の技能実習制度から育成就労制度へ移行するにあたり、政府がどのような方針で国際的な枠組みを整えようとしているのか、公表された資料から重要となるポイントを客観的に整理します。 今回の協力覚書(MOC)が目指すもの 今回の合意の最大の目的は、日タイ両国が緊密に連携することで「育成就労外国人の保護」と「制度の適正な運用」を図ることにあります。 特に、これまでの技能実習制度において構造的な課題とされていた、高額な手数料を徴収する不適切な「仲介業者(悪質なブローカー)」を排除し、クリーンな受入環境を構築するための相互義務が明文化されました。 両国が約束した主な責務 覚書では、日本とタイの双方が適切なチェック機能を果たすための具体的な役割が定められています。 区分 主な約束・責務の内容 日本の省庁の責務 ・適切な監理支援機関の許可、および育成就労計画の認定を行う。 ・タイ側から不適切な受入企業(育成就労実施者)の通報があった場合は調査し、適切に対処する。 ・許可や認定の取消しを行った場合はタイ側に通知する。 タイ政府の責務 ・明確な審査基準のもとで「認定送出機関」の選定・管理を適切に行う。 ・日本側からの通報に基づき、不適切な送出機関への調査・指導を行う。 ・公的機関以外の勝手な送出機関の推薦を認めない。 実務上、特に注目すべき「重要なルール」 公表された別添資料(待遇基準や認定基準)を確認すると、今後の外国人雇用において、企業側および監理支援機関が遵守すべき「厳格なコンプライアンス」がより明確になっています。 人権侵害の定義(妊娠・出産による帰国の禁止) 契約において「妊娠・出産等を理由とした強制的な帰国」に関する条項を設けることは不適切であり、これらは人権侵害に該当すると再確認されました。これに違反した場合は、育成就労計画の認定取消しなどの対象となります。 費用の透明化と上限設定 外国人が認定送出機関に支払う費用は、「育成就労計画に記載された報酬月額の2ヶ月分を超えないこと」と明記されました。また、監理支援費などの経費を、直接的・間接的を問わず外国人に負担させることは明確に禁止されています。 不当な違約金契約の禁止 送り出し機関、受入企業、監理支援機関の間、あるいは外国人との間で、契約不履行に対する「違約金」を定めるような、不当に金銭の移転を予定する契約は一切認められません。 今後の見通し タイ王国との間で初の覚書が交わされたことを皮切りに、今後はベトナムやインドネシアなど、他の主要な送り出し国とも順次、同様の協力覚書(MOC)の締結が進んでいくものと予想されます。 2027年春の施行に向け、受入枠(受入れ見込数)の設定や各産業分野の具体的な規則など、今後も精緻なインフラ整備が進められていきます。当事務所では、企業様が安定した人事・採用計画を中長期的に組み立てられるよう、引き続き公的な情報に基づいたアナウンスをいたします。 なお、今回の発表に関する詳細な報道発表資料や覚書の仮訳(日本語)は、出入国在留管理庁の公式ホームページで公開されています。 ■ 関連リンク(一次情報) タイ王国との育成就労制度に関する協力覚書について | 出入国在留管理庁

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