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近年、ギグワーカーやプラットフォームワーカーをはじめとするフリーランス的な働き方が急速に広がっています。

これに伴い、「実質的には労働者なのではないか?」「労働基準法を適用すべきか?」という「労働者性(使用従属性)」の判断基準について、厚生労働省の「労働基準法における『労働者』に関する研究会」で議論が進められています。


今回は、2026年(令和8年)7月17日に開催された「第6回 労働基準法における『労働者』に関する研究会」の配付資料に基づき、その最新の実態と今後の見通しについて分かりやすく解説します。


1. なぜ今、「労働者性」の判断が問題になっているのか?

従来の労働基準法における「労働者」の判断は、昭和60年(1985年)の報告書に示された基準(昭和60年報告)がベースとなっています。

しかし、近年では以下のような変化が生じています。

アプリやAI(アルゴリズム)による業務割り当てやルート提示

対面での指揮命令がないフルリモートやギグワーク

勤務時間や場所は自由だが、評価システム等による実質的な制約

このような「新しい働き方」に対して、昭和60年の判断基準をそのまま当てはめることが難しくなっており、予見可能性(企業や働く人があらかじめ判断できること)を高めるためのルール再整理が求められているのです。


2. プラットフォームワーカーの実態調査から見えたリアル

第6回研究会の資料では、事業者やワーカーへのヒアリング結果(実態調査)が報告されました。従来の判断要素に当てはめると、以下のような実態が見えてきます。

昭和60年報告の判断要素

実態調査から見えた主な傾向

① 業務オファーの拒否権

案件の拒否は原則自由であり、直接的なペナルティは基本的に見られない。

② 指揮監督の有無

直接の指揮命令はないが、アプリによる目的地通知や安否・トラブル確認用のGPS活用などが行われている。AIの提示ルートは任意利用が多い。

③ 時間・場所の拘束性

基本的に働く時間・場所は自由。ただしクライアントの要望による常駐案件も一部存在。

④ 代替性(代理稼働)

セキュリティや本人確認(顔認証等)の観点から、無断での代理稼働は制限されている。

⑤ 報酬の性質

稼働時間に比例するケースと、需要や天候に応じた「動的価格(ダイナミック・プライシング)」によるケースに分かれる。

⑥ 事業者性・専属性

業務端末や車両は自己負担が多いが、事故等の保険は事業者側が提供する傾向が増加。副業・掛け持ち層が多数派。

このように、従来の「典型的な労働者」とも「完全な事業主」とも言い切れない中間的な働き方が広がっていることが浮き彫りになりました。


3. 今後の法改正・議論の3つのポイント

研究会で示された「これまでの議論の整理(案)」では、以下の重要なポイントが議論されています。

① 欧米・EUの動向(「労働者性の推定」規定など)

海外では、プラットフォーム企業に対して「原則として労働者と推定し、企業側が反証できない限り労働者として扱う」といった強力なルール(EU指令など)を導入する動きがあります。日本においてこのような仕組みを導入すべきか否か、罰則規定との兼ね合いも含めて慎重に議論されています。

②「業務上必然な指示・拘束」の評価

例えば、「配送先を指定する」「安全のためのルールを守らせる」「演奏・運送の時間を指定する」といった行為は、注文者として当然の指示なのか、それとも労働者としての指揮監督なのか。これらをどう切り分けて評価するか(ニュートラルに扱うか)が議論されています。

③ 行政(労基署)における判断基準の明確化

裁判まで行かなくても、労基署や企業の現場で「この契約は労働者にあたるのか?」を迅速かつ的確に判断できるよう、明確なガイドラインやチェックリストの策定が検討されています。


4. 企業・事業主が今から意識しておくべき対策

今後、厚生労働省からガイドラインの提示や判断基準のアップデートが行われる見込みです。業務委託や請負、サロンや配送などのプラットフォーム事業を運用している企業様は、以下の点に注意が必要です。


  1. 実質的な「指揮監督」になっていないかの見直し

    • 契約書上は「業務委託」であっても、アプリの通知やチャット等で「細かい時間指定や作業指示」を過度に行っていないか確認する。

  2. ペナルティや評価システムの透明性

    • 業務拒否に対する不利益(アカウント停止や評価下げ)が実質的な強制力・拘束力を持っていないか整理する。

  3. 契約書と運用実態の一致

    • 契約書の内容だけでなく、「実際の働き方(現場の運用)」が重視されます。定期的に現場の実態をヒアリング・点検することが不可欠です。


5. 「社労士の視点:今、企業に求められるガバナンス」

プラットフォームワークをはじめとする多様な働き方の進展に伴い、「業務委託か、労働者か」という境界線はより緻密に判断される時代に入っています。


「うちは業務委託契約だから大丈夫」と思っていても、実態によって「労働者」と判断された場合、過去に遡って残業代や社会保険の適用が求められるリスクもあります。

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といったご相談がございましたら、お問い合わせください。



(※2026年7月時点の厚生労働省「第6回 労働基準法における『労働者』に関する研究会」資料を基に作成しています。今後の法改正やガイドラインの動向に引き続き注目が必要です。)

JR東海(退職)事件


【判例概要】

JR東海の従業員が脳内出血で倒れ、会社の休職・復職判定委員会の判定に基づいて病気休職中であったが、本人の復職の意思表示にもかかわらず、三年の休職期間満了により退職扱いと決定された。これに対し右退職扱いを違法として従業員としての地位確認等を求めたケース。裁判所は、使用者は配置換え等により現実に配置可能な業務の有無を検討すべきであり、復職不能とした判断には誤りがあるとして、就業規則に基づく退職扱いを無効(請求認容)とした。(労働基準法第2章 / 労働判例771号25頁)


改めて考える、労働判例が突きつける実務の本質

現場で数々の労務管理や企業ガバナンスに向き合ってきた中で、この「JR東海(退職)事件」の判例について、改めてその重みを深く考えています。

就業規則に「休職期間が満了した場合は自動的に退職とする」と明記していれば、会社は当然に契約を終了できると考えがちです。


しかし、本判例が示している本質は、「就業規則の文字通りに処理したか」ではなく、「会社として、その労働者を残すための誠実な検討を行ったか」というプロセスの有無です。


会社の判定委員会や医師が「従来の業務(この場合は乗務員等)に戻るのは困難」と判断した場合であっても、裁判所は以下の点を冷徹に観察します。

  1. 従来の業務以外の「軽易な業務」や「配置転換」の可能性を具体的に検討したか

  2. 本人の意欲や回復状況に応じた、段階的な復職プランを模索したか

  3. それらの検討過程が、客観的な記録として残されているか


冷酷な処理ではなく、「誠実なプロセス」こそが防波堤になる

私傷病やメンタルヘルスによる休職トラブルにおいて、会社側が「規定通りです」と突っぱねてしまうと、後に地位確認請求(裁判)を起こされた際、非常に厳しい立場に立たされます。


本当に会社を守る労務管理とは、従業員を冷酷に切り捨てることではありません。

「会社としてどこまで配慮し、どこまで検討したのか」という誠実な観察と記録(ガバナンス)を日頃から積み重ねておくことこそが、結果として最大の法的な防波堤となります。


休職・復職の運用においては、規則の文面だけを追うのではなく、事案ごとの「プロセスの構築」を丁寧に行うことが求められます。



「うちは昔からのタイムカードもあるし、労働条件通知書も揃えているから大丈夫」

もし経営者様がそうお考えであれば、大変酷ですが、現在の労働基準監督署(労基署)の臨検(立入調査)においては、その認識自体が最大の引き金になりかねません。


今、労働行政の現場で何が起きているのか。

法改正の定着と企業のデジタル化(DX)に伴い、監督官の調査手法はこれまでにないスピードで「激変」しています。

ネットに転がっているようなマニュアル対応では会社を守れない、2026年現在の臨検のリアルと、経営者が備えるべき真のガバナンスについてお伝えします。


1. 監督官が最初に開示を求める「生のデータ」

かつての臨検といえば、紙のタイムカードと賃金台帳を突き合わせる作業が主流でした。しかし現在、監督官が最も注力して確認するのは「デジタルのアクセスログ」です。

PCのログイン・ログアウト履歴

社内システムのサーバー操作ログ

入退館ゲートのセキュリティデータ

企業が勤怠管理システムを導入したことで、逆に「打刻時間」と「実際の稼働時間」の乖離(かいり)がデジタルデータとして完璧に証拠化される時代になりました。


「本人が勝手に残業していた」「自己申告で定時退社と書いてある」という主張は、客観的なログデータの前には一切の効力を持ちません。

行政は今、この「デジタルの乖離」をピンポイントで突き、是正勧告を行っています。


2. 「名ばかり管理職」と「チャット文化」に迫る刃

もうひとつ、現在の臨検で非常に厳しい追及が行われているのが、幹部社員や店長・課長といった「管理監督者」の範囲です。

人手不足や人件費高騰のなかで、名目上の役職をつけて残業代の支給対象外としているケースに対し、行政の審査基準は過去最高レベルで厳格化しています。

単なる肩書きではなく、「採用や予算に関する真の権限があるか」「出退勤の自由があるか」が徹底的に洗われます。


さらに近年増えているのが、SlackやLINE、メールなどの「業務チャットの送信履歴」です。

深夜や休日に上司から送られた一本のメッセージが、「指揮命令下にあった(=労働時間である)」と認定される事例が相次いでいます。表面上の契約書ではなく、「実際のコミュニケーションの実態」が見られているのです。


3. 臨検対応の本質とは「言い訳の手引き」ではない

臨検の通知が届いたとき、多くの経営者様が深い孤独と不安に包まれます。

しかし、ここで最もやってはならないのは、行政のマニュアル通りの正論を丸暗記して逃げ切ろうとすることです。

労基署の臨検対応の本質は、不備を隠すための「言い訳の手引き」ではありません。

自社の実情を正確に把握したうえで、法令の枠組みのなかでいかに会社と従業員を守り、

健全な組織へと着地させるかという「経営ガバナンスの再構築」そのものです。


行政の指導をただ恐れるのではなく、自社のリスクを正しく見極め、万が一の際には会社と経営者様の立場に立って共に寄り添う社労士が存在するかどうか。

当事務所が目指すのは、経営者様の決断に共によりそう社労士であることです。



未来の常識を創造し、           

企業の全ての人を明るくする。

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