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2026年8月6日、厚生労働省より「令和7年に全国の労働基準監督署等が自動車運転者を使用する事業場に対して行った監督指導(立入調査)や送検等の状況」が公表されました。


2024年4月に「改善基準告示の改正」および「時間外労働の上限規制(年960時間)」が適用されてから1年が経過した時点での、リアルな監督指導の実態を示す重要なデータです。


今回は、公表されたデータから見えてくる「労基署が重点的にチェックしているポイント」と、企業が今すぐ取り組むべき実務対策を分かりやすく整理してお伝えします。


1. 監督指導結果の全体像(違反率は81.2%)

令和7年に全国の労働基準監督署がトラック・バス・タクシーなどの事業場(4,123事業場)に実施した監督指導の結果は以下の通りです。


労働基準関係法令違反あり: 3,346事業場(81.2%


改善基準告示違反あり: 2,188事業場(53.1%


重大・悪質な違反による送検件数: 67件


調査が入った事業場のうち、実に8割以上で何らかの法令違反が認められており、

非常に厳格な調査が行われていることが窺えます。



2. 主な違反事項(どこが狙われているか?)

公表されたデータによると、労基署が重点的に確認している違反項目には明確な傾向があります。


① 労働基準関係法令違反のワースト3

  1. 労働時間(39.3%):時間外労働の上限超過や36協定違反など


  2. 割増賃金の支払(19.7%):残業代の計算不備や未払い


  3. 労働時間の状況の把握(6.3%):客観的な時間管理の不足


② 改善基準告示違反のワースト3

  1. 最大拘束時間(40.2%):1日または1か月あたりの拘束時間上限オーバー


  2. 休息期間(28.3%):勤務間の休息時間(9時間〜11時間以上)の不足


  3. 総拘束時間(27.4%):年間の総拘束時間上限オーバー


ポイント

「労働時間」と「最大拘束時間・休息期間」が違反の大部分を占めています。

デジタコ(デジタルタコグラフ)の記録と出勤簿・日報との整合性が厳しくチェックされている状況が浮き彫りになっています。



3. 「発着荷主」に対する要請と「荷主特別対策チーム」の動き

今回の発表で特に注目すべきは、運送事業者だけでなく「発着荷主等への働きかけ」についても明記されている点です。


長時間労働や拘束時間オーバーの背景には、荷主都合による「長時間の荷待ち(手待ち時間)」や「無理な配送スケジュールの指定」が存在することが少なくありません。


厚労省では都道府県労働局に「荷主特別対策チーム」を編成し、長時間の恒常的な荷待ちを発生させないよう、発着荷主に対して直接的な要請や周知を行っています。今や荷主企業にとっても、運送業者との取引環境見直しはコンプライアンス上の重要課題となっています。



4. 企業が今すぐ取り組むべき3つの実務対策

今回の結果を踏まえ、自動車運転者を使用する企業(および関連する荷主企業)は以下の点検を優先して行うことをおすすめします。


  1. デジタコデータと労働時間管理の不整合チェック


    タイムカードの打刻時間と、デジタコの運行記録・タコグラフの始動/停止時間にズレがないか確認・是正する。


  2. 休息期間(勤務間インターバル)の確実な確保


    シフト作成段階で、継続11時間(最低9時間)の休息期間が確保できているか再検証する。


  3. 荷待ち時間の記録と荷主との協議


    荷待ちが発生している場合は記録を可視化し、発着荷主に対してタイムスケジュールの緩和や改善を協議する。



まとめ

度重なる指導に応じない重大・悪質なケースに対しては、すでに67件が「送検」という厳しい処置をとられています。


「これくらいは業界の慣習だから」と放置せず、自社の運行管理と労働時間管理の実態を客観的に把握し、早め早めの見直しと改善を進めていくことが重要です。



※出典:厚生労働省「自動車運転者を使用する事業場に対する令和7年の監督指導、送検等の状況(令和8年8月6日公表)」




2026年7月21日、政府の合同会議にて「日本成長戦略」および「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太方針)」が閣議決定されました。


これらは、今後数年間における日本の経済・労働政策の「ロードマップ(指針)」となる極めて重要な決定です。


労働時間法制の見直し、最低賃金の引き上げ、社会保険制度の再編など、企業経営や人事労務に直結する項目が多数盛り込まれています。今回は、中小企業の経営者や人事担当者が今押さえておくべき主要ポイントを分かりやすく整理してお伝えします。


1. 労働時間法制の見直し(2026年夏以降の動向)

今回の成長戦略では、柔軟で多様な働き方の実現と労働者の健康確保を両立させるため、

労働時間法制に関する具体的な検討スケジュールが示されました。


  • 裁量労働制・変形労働時間制の見直し


    現場の実態や労使双方の立場を踏まえ、長時間労働の防止や適切な処遇確保などの濫用防止措置を前提に、対象業務や運用のあり方の検討が進められます。


    新たな働き方・勤務環境への対応


    勤務間インターバル制度の法的位置付けをはじめ、「つながらない権利(勤務時間外の連絡制限)」のあり方、副業・兼業における健康確保、テレワークの活用促進などについて検討が行われます。


    労働基準監督署の指導・相談体制


    重大・悪質な事案には厳正に対応する一方、時間外労働の実態に応じた36協定の締結や柔軟な労働時間制度の活用について、「働き方改革推進支援センター」等と連携した相談支援の充実が図られます。


Point

2026年夏以降、労働政策審議会(労政審)での具体的な議論が順次スタートします。


2. 賃上げ環境の整備と最低賃金の方針

持続的な賃上げと中小企業の「稼ぐ力」強化に向けた施策パッケージも明記されました。


最低賃金の目標


2030年代前半までに全国平均1,500円の達成を目指し、労働生産性の向上面とあわせて官民での取り組みが継続されます。また、地域間格差の是正も重視されています。


実質賃金年1%上昇の定着


2029年度までに、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を「社会通念(ノルム)」として定着させることが掲げられました。


中小企業への伴走支援・取引適正化


価格転嫁の徹底、省力化投資(設備投資・IT化支援など)の推進、M&Aや事業再編を通じた生産性向上支援など、賃上げしやすい環境を整える施策が盛り込まれています。



3. 社会保障・労働市場改革のゆくえ

人手不足が深刻化する中、社会保障制度や雇用の仕組みについても中長期的な見直しが進められます。


雇用保険制度の再編


労働力供給制約に対応した雇用保険のあり方について、2026年内を目途に結論が得られるよう検討が進められます。


医療・介護等の制度見直し


高齢者の医療費窓口負担の原則や介護保険の自己負担割合の見直し、医療・介護・障害福祉分野における人材確保と他職種と遜色のない処遇改善の実現が掲げられています。


多様な人材の能力発揮(リスキリング)


処遇向上に向けたリスキリング支援や、女性・若者・就職氷河期世代などの就業・能力発揮に向けた環境整備が一層強化されます。



まとめ

今回の閣議決定は、すぐに全ての法律が変わるわけではありませんが、「政府がこれから数年間でどの方向を目指しているか」を示す明確な指針です。


労働時間の管理方法、就業規則の整備、賃金の引き上げ計画、社会保険の負担構造など、

今後の企業対応を見据え、自社の現行制度を定期的に見直しておくことが重要になります。


※出典:内閣官房「日本成長戦略(令和8年7月21日閣議決定)」および内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026」



厚生労働省より、令和8(2026)年8月1日以降に適用される「雇用保険の基本手当日額」や「各種給付金(高年齢雇用継続・育児・介護等)の支給上限額」の改定が公表されました。


今回の改定は、毎月勤労統計の平均定期給与額の変化に伴う見直しですが、「単なる労働者向けの手当変更」と見過ごしていると、定年後の賃金設計のズレや社内トラブルにつながる恐れがあります。


本記事では、経営者や人事労務担当者が今すぐ押さえておくべきポイントと、実務上の注意点を分かりやすく解説します。


1. 今回の改定内容のポイント(主要な上限額・下限額)

今回の改定では、全体として上限額・下限額ともに引き上げ(増額)となっています。

① 高年齢雇用継続給付金(定年再雇用者向け)

  • 支給限度額: 月額 386,922円 ➔ 397,369円(+10,447円)

  • 60歳到達時等の賃金月額上限: 508,200円 ➔ 522,000円


② 育児休業給付金・出生時育児休業給付金(パパ育休)

  • 育児休業給付(支給率67%・上限): 月額323,811円 ➔ 332,454円(+8,643円)

  • 育児休業給付(支給率50%・上限): 月額241,650円 ➔ 248,100円(+6,450円)

  • 出生時育児休業給付(上限): 302,223円 ➔ 310,290円(+8,067円)


③ 雇用保険の基本手当日額(失業給付)

  • 45歳以上60歳未満(上限): 8,870円 ➔ 9,110円(+240円/日)

  • 60歳以上65歳未満(上限): 7,623円 ➔ 7,830円(+207円/日)

  • 全年齢(下限額): 2,411円 ➔ 2,562円(+151円/日)


2. 経営者が特に注意すべき

「定年後の賃金設計」と「労務対応」


今回の改定に伴い、会社側で特に注意・対応すべきなのは以下の3点です。


注意点①:定年再雇用者の「賃金シミュレーション」の再確認

60歳以降も継続雇用する嘱託社員などの賃金設計において、「高年齢雇用継続給付」の支給を見込んだ給与体系を組んでいる会社は注意が必要です。


支給限度額が397,369円に引き上げられたため、会社が支払う基本給と給付金の合計額のバランスを再確認しておく必要があります。

「シミュレーションと実際の支給額がズレて社内説明と食い違う」といったトラブルを防ぐためにも、8月以降の支給対象月の確認が不可欠です。


注意点②:育休取得者への正確な説明による「エンゲージメント向上」

育休給付金の上限額が引き上げられたことで、比較的給与水準の高い社員が育休を取得した際の手取り減少幅が緩和されます。

社員から「育休中の手当はいくらくらいになりますか?」と相談された際、会社側が最新の上限額(支給率67%で月最大約33.2万円)を踏まえて正確に説明できることは、

社員からの信頼感(エンゲージメント)や安心感に大きく直結します。


注意点③:労務ソフトのマスタ更新とハローワーク提出書類の確認

8月1日以降に離職する社員の離職票作成や、各種給付金の申請手続きにおいて、自動計算される上限額が切り替わります。

自社で給与計算・労務ソフトを導入している場合は、8月改定のマスタ更新が正しく行われているか必ず確認しておきましょう。


3. まとめ:法改正・各種改定への迅速な対応が会社を守る


雇用保険や各種給付金の上限額は、毎年のように細かな改定が行われます。

「知らなかった」ことによる計算ミスや社内説明の齟齬は、従業員との信頼関係を損ねる原因にもなりかねません。

常に最新の労務情報をキャッチアップし、自社の賃金規定や労務手続に反映させていくことが重要です。


🔗 参考リンク(厚生労働省公式案内)

今回の改定に関する詳しい資料や、社内配布・確認用のリーフレット(PDF)は、厚生労働省の公式ホームページにて公開されています。

実務での確認や社内共有にご活用ください。


雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ 001726934.pdf

高年齢雇用継続給付金 介護休業給付金 の受給者の皆さまへ 001728499.pdf

 基本手当日額の計算式及び金額(令和8年8月1日~) 001726936.pdf


👉[お問い合わせ・ご相談はこちらから three-sr@outlook.jp]



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