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  • 【7/28発表】令和8年度の最低賃金どうなる?目安公表で見えてきた「今からやるべき準備」

    前回は「プラットフォームワーカーと労働者性」という最新の労務テーマをお届けしましたが、今回は一転して、すべての事業者さまに関わる「最低賃金の改定」についてのお話です。 7月28日、令和8年度の地域別最低賃金改定に向けた「引き上げ額の目安」が中央最低賃金審議会より発表されました。 毎年この時期になると「今年はどれくらい上がるんだろう…」「自社の賃金体系は大丈夫かな」と気になっている経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。 今回は、発表された目安のポイントと、秋の発効に向けて今から準備しておきたいことについて、分かりやすくまとめてみました。 今年の引き上げ目安のポイント 今年の改定目安のポイントは、大きく分けて以下の3点です。 全国加重平均で「55円」の引き上げ目安 全国平均の時給は1,176円となる見込みです。昨年度の66円増に比べるとやや落ち着いたものの、引き続き高水準な引き上げ傾向が続いています。 地域によるランク別の目安 Aランク(東京・大阪など6都府県): 54円 Bランク(京都・兵庫・北海道など28道府県): 56円 Cランク(青森・沖縄など13県): 56円 地域間格差の縮小 地方(B・Cランク)の引き上げ目安を都市部(Aランク)より高く設定することで、地域ごとの賃金格差を縮小しようという意図がうかがえます。 ※なお、これはあくまで中央審議会の「目安」です。実際の改定額は、これから各都道府県の審議会で話し合われ、8月中旬〜下旬にかけて正式決定していきます。 秋に向けて、今から見直しておきたい3つのこと 正式な金額が決まり、実際に新しい最低賃金が適用されるのは今年(令和8年)の10月ごろになります。直前になって慌てないために、今のうちから少しずつ確認を進めておくのがおすすめです。 1. 支給手当を含めた「実質的な時給」の再確認 「基本給は最低賃金を超えているから安心」と思っていても、各種手当の扱いによっては計算方法が複雑になる場合があります。特に、固定残業代や各種手当を支給している場合は、最低賃金の対象となる手当・とならない手当(通勤手当や家族手当、皆勤手当など)を整理し、時給換算で下回っていないか確認しておくとスムーズです。 2. 扶養内・社会保険の加入条件(年収の壁)の意識 時給が上がることで、パートやアルバイトのスタッフさんの中で「扶養の範囲内で働きたい」「労働時間を調整したい」という相談が増える可能性があります。シフトの組み方や採用計画にも影響するため、事前にスタッフさんの働き方の希望をヒアリングしておくと安心です。 3. 業務効率化や公的支援策の検討 賃金引き上げに伴い、人件費の負担感が増す企業も少なくありません。政府も「業務改善助成金」などの支援策を用意しています。設備投資やITツールの導入で生産性を上げつつ、賃金引き上げを図る仕組みを上手に活用するのも選択肢のひとつです。 まとめ 最低賃金の引き上げは、経営者にとって人件費コストの増加という大きな課題であると同時に、「自社の労務体制を底上げし、採用力・定着率を高める絶好の機会」でもあります。 時給をただ上げるだけではなく、このタイミングで「適切な手当の設計」や「業務プロセスの見直し」をあわせて行うことで、人件費の膨張を抑えつつ、従業員の満足度を高める健全な労務管理が実現できます。 秋の正式決定・適用に向けて、自社の賃金構造のチェックや助成金の活用シミュレーションなど、準備を進めてみてはいかがでしょうか。 令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について|厚生労働省

  • 【社労士解説】プラットフォームワーカーと「労働者性」~厚労省・第6回研究会の最新論点と企業への影響~

    近年、ギグワーカーやプラットフォームワーカーをはじめとするフリーランス的な働き方が急速に広がっています。 これに伴い、「実質的には労働者なのではないか?」「労働基準法を適用すべきか?」という「労働者性(使用従属性)」の判断基準について、厚生労働省の「労働基準法における『労働者』に関する研究会」で議論が進められています。 今回は、2026年(令和8年)7月17日に開催された「第6回 労働基準法における『労働者』に関する研究会」の配付資料に基づき、その最新の実態と今後の見通しについて分かりやすく解説します。 1. なぜ今、「労働者性」の判断が問題になっているのか? 従来の労働基準法における「労働者」の判断は、昭和60年(1985年)の報告書に示された基準(昭和60年報告)がベースとなっています。 しかし、近年では以下のような変化が生じています。 アプリやAI(アルゴリズム)による業務割り当てやルート提示 対面での指揮命令がないフルリモートやギグワーク 勤務時間や場所は自由だが、評価システム等による実質的な制約 このような「新しい働き方」に対して、昭和60年の判断基準をそのまま当てはめることが難しくなっており、予見可能性(企業や働く人があらかじめ判断できること)を高めるためのルール再整理が求められているのです。 2. プラットフォームワーカーの実態調査から見えたリアル 第6回研究会の資料では、事業者やワーカーへのヒアリング結果(実態調査)が報告されました。従来の判断要素に当てはめると、以下のような実態が見えてきます。 昭和60年報告の判断要素 実態調査から見えた主な傾向 ① 業務オファーの拒否権 案件の拒否は原則自由であり、直接的なペナルティは基本的に見られない。 ② 指揮監督の有無 直接の指揮命令はないが、アプリによる目的地通知や安否・トラブル確認用のGPS活用などが行われている。AIの提示ルートは任意利用が多い。 ③ 時間・場所の拘束性 基本的に働く時間・場所は自由。ただしクライアントの要望による常駐案件も一部存在。 ④ 代替性(代理稼働) セキュリティや本人確認(顔認証等)の観点から、無断での代理稼働は制限されている。 ⑤ 報酬の性質 稼働時間に比例するケースと、需要や天候に応じた「動的価格(ダイナミック・プライシング)」によるケースに分かれる。 ⑥ 事業者性・専属性 業務端末や車両は自己負担が多いが、事故等の保険は事業者側が提供する傾向が増加。副業・掛け持ち層が多数派。 このように、従来の「典型的な労働者」とも「完全な事業主」とも言い切れない中間的な働き方が広がっていることが浮き彫りになりました。 3. 今後の法改正・議論の3つのポイント 研究会で示された「これまでの議論の整理(案)」では、以下の重要なポイントが議論されています。 ① 欧米・EUの動向(「労働者性の推定」規定など) 海外では、プラットフォーム企業に対して「原則として労働者と推定し、企業側が反証できない限り労働者として扱う」といった強力なルール(EU指令など)を導入する動きがあります。日本においてこのような仕組みを導入すべきか否か、罰則規定との兼ね合いも含めて慎重に議論されています。 ②「業務上必然な指示・拘束」の評価 例えば、「配送先を指定する」「安全のためのルールを守らせる」「演奏・運送の時間を指定する」といった行為は、注文者として当然の指示なのか、それとも労働者としての指揮監督なのか。これらをどう切り分けて評価するか(ニュートラルに扱うか)が議論されています。 ③ 行政(労基署)における判断基準の明確化 裁判まで行かなくても、労基署や企業の現場で「この契約は労働者にあたるのか?」を迅速かつ的確に判断できるよう、明確なガイドラインやチェックリストの策定が検討されています。 4. 企業・事業主が今から意識しておくべき対策 今後、厚生労働省からガイドラインの提示や判断基準のアップデートが行われる見込みです。業務委託や請負、サロンや配送などのプラットフォーム事業を運用している企業様は、以下の点に注意が必要です。 実質的な「指揮監督」になっていないかの見直し 契約書上は「業務委託」であっても、アプリの通知やチャット等で「細かい時間指定や作業指示」を過度に行っていないか確認する。 ペナルティや評価システムの透明性 業務拒否に対する不利益(アカウント停止や評価下げ)が実質的な強制力・拘束力を持っていないか整理する。 契約書と運用実態の一致 契約書の内容だけでなく、「実際の働き方(現場の運用)」が重視されます。定期的に現場の実態をヒアリング・点検することが不可欠です。 5. 「社労士の視点:今、企業に求められるガバナンス」 プラットフォームワークをはじめとする多様な働き方の進展に伴い、「業務委託か、労働者か」という境界線はより緻密に判断される時代に入っています。 「うちは業務委託契約だから大丈夫」と思っていても、実態によって「労働者」と判断された場合、過去に遡って残業代や社会保険の適用が求められるリスクもあります。 自社の業務委託契約のリスクを点検したい フリーランス新法や労働者性の最新基準に合わせた社内規定を作りたい といったご相談がございましたら、お問い合わせください。 労働基準法における「労働者」に関する研究会 第6回資料|厚生労働省 001725186.pdf (※2026年7月時点の厚生労働省「第6回 労働基準法における『労働者』に関する研究会」資料を基に作成しています。今後の法改正やガイドラインの動向に引き続き注目が必要です。)

  • 休職期間満了による退職扱いの限界 —— JR東海事件から考える「会社を守る誠実なプロセス」

    JR東海(退職)事件 【判例概要】 JR東海の従業員が脳内出血で倒れ、会社の休職・復職判定委員会の判定に基づいて病気休職中であったが、本人の復職の意思表示にもかかわらず、三年の休職期間満了により退職扱いと決定された。これに対し右退職扱いを違法として従業員としての地位確認等を求めたケース。裁判所は、使用者は配置換え等により現実に配置可能な業務の有無を検討すべきであり、復職不能とした判断には誤りがあるとして、就業規則に基づく退職扱いを無効(請求認容)とした。(労働基準法第2章 / 労働判例771号25頁) 改めて考える、労働判例が突きつける実務の本質 現場で数々の労務管理や企業ガバナンスに向き合ってきた中で、この「JR東海(退職)事件」の判例について、改めてその重みを深く考えています。 就業規則に「休職期間が満了した場合は自動的に退職とする」と明記していれば、会社は当然に契約を終了できると考えがちです。 しかし、本判例が示している本質は、「就業規則の文字通りに処理したか」ではなく、「会社として、その労働者を残すための誠実な検討を行ったか」というプロセスの有無です。 会社の判定委員会や医師が「従来の業務(この場合は乗務員等)に戻るのは困難」と判断した場合であっても、裁判所は以下の点を冷徹に観察します。 従来の業務以外の「軽易な業務」や「配置転換」の可能性を具体的に検討したか 本人の意欲や回復状況に応じた、段階的な復職プランを模索したか それらの検討過程が、客観的な記録として残されているか 冷酷な処理ではなく、「誠実なプロセス」こそが防波堤になる 私傷病やメンタルヘルスによる休職トラブルにおいて、会社側が「規定通りです」と突っぱねてしまうと、後に地位確認請求(裁判)を起こされた際、非常に厳しい立場に立たされます。 本当に会社を守る労務管理とは、従業員を冷酷に切り捨てることではありません。 「会社としてどこまで配慮し、どこまで検討したのか」という誠実な観察と記録(ガバナンス)を日頃から積み重ねておくことこそが、結果として最大の法的な防波堤となります。 休職・復職の運用においては、規則の文面だけを追うのではなく、事案ごとの「プロセスの構築」を丁寧に行うことが求められます。

  • 『労基署の立ち入り調査が変わった。2026年、経営者が知っておくべき最新リアルの裏側』

    「うちは昔からのタイムカードもあるし、労働条件通知書も揃えているから大丈夫」 もし経営者様がそうお考えであれば、大変酷ですが、現在の労働基準監督署(労基署)の臨検(立入調査)においては、その認識自体が最大の引き金になりかねません。 今、労働行政の現場で何が起きているのか。 法改正の定着と企業のデジタル化(DX)に伴い、監督官の調査手法はこれまでにないスピードで「激変」しています。 ネットに転がっているようなマニュアル対応では会社を守れない、2026年現在の臨検のリアルと、経営者が備えるべき真のガバナンスについてお伝えします。 1. 監督官が最初に開示を求める「生のデータ」 かつての臨検といえば、紙のタイムカードと賃金台帳を突き合わせる作業が主流でした。しかし現在、監督官が最も注力して確認するのは「デジタルのアクセスログ」です。 PCのログイン・ログアウト履歴 社内システムのサーバー操作ログ 入退館ゲートのセキュリティデータ 企業が勤怠管理システムを導入したことで、逆に「打刻時間」と「実際の稼働時間」の乖離(かいり)がデジタルデータとして完璧に証拠化される時代になりました。 「本人が勝手に残業していた」「自己申告で定時退社と書いてある」という主張は、客観的なログデータの前には一切の効力を持ちません。 行政は今、この「デジタルの乖離」をピンポイントで突き、是正勧告を行っています。 2. 「名ばかり管理職」と「チャット文化」に迫る刃 もうひとつ、現在の臨検で非常に厳しい追及が行われているのが、幹部社員や店長・課長といった「管理監督者」の範囲です。 人手不足や人件費高騰のなかで、名目上の役職をつけて残業代の支給対象外としているケースに対し、行政の審査基準は過去最高レベルで厳格化しています。 単なる肩書きではなく、「採用や予算に関する真の権限があるか」「出退勤の自由があるか」が徹底的に洗われます。 さらに近年増えているのが、SlackやLINE、メールなどの「業務チャットの送信履歴」です。 深夜や休日に上司から送られた一本のメッセージが、「指揮命令下にあった(=労働時間である)」と認定される事例が相次いでいます。表面上の契約書ではなく、「実際のコミュニケーションの実態」が見られているのです。 3. 臨検対応の本質とは「言い訳の手引き」ではない 臨検の通知が届いたとき、多くの経営者様が深い孤独と不安に包まれます。 しかし、ここで最もやってはならないのは、行政のマニュアル通りの正論を丸暗記して逃げ切ろうとすることです。 労基署の臨検対応の本質は、不備を隠すための「言い訳の手引き」ではありません。 自社の実情を正確に把握したうえで、法令の枠組みのなかでいかに会社と従業員を守り、 健全な組織へと着地させるかという「経営ガバナンスの再構築」そのものです。 行政の指導をただ恐れるのではなく、自社のリスクを正しく見極め、万が一の際には会社と経営者様の立場に立って共に寄り添う社労士が存在するかどうか。 当事務所が目指すのは、経営者様の決断に共によりそう社労士であることです。

  • 【令和8年最新】「シフト制」における雇用管理の留意点と有給休暇・休業手当の実務対応

    近年、パート・アルバイトを中心に「シフト制」での働き方が広がっています。 その時々の事情に応じて柔軟な時間設定ができるという労使双方のメリットがある一方で、勤務変更や休業時の対応などをめぐり、実務上の運用に悩まれる現場も少なくありません。 こうした背景から、厚生労働省は令和4年に策定された「シフト制の留意事項」を、令和8年6月に改正しました。 今回の改正では、特に判断が分かれやすい「シフト制労働者の年次有給休暇」の具体的な取扱いが明確化されています。 本記事では、経営者や労務担当者様が押さえておくべき実務上のポイントを客観的に整理します。 1. そもそもガイドラインにおける「シフト制」の定義とは? このガイドラインが対象とする「シフト制」とは、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間ごとに作成される勤務シフト等によって初めて確定するような勤務形態を指します。 ※あらかじめ就業規則等で勤務パターンが組み合わされている「三交替勤務(通常の交替制勤務)」などは、今回の留意事項の対象外です。 2. 労働契約の締結時に「書面」で明示すべきこと 労働契約の締結に際し、「始業・終業時刻」や「休日」を書面で明示することは労働基準法上の義務(労基法第15条)です。シフト制であっても以下のように具体的な明示が求められます。 「始業及び終業の時刻」 単に「シフトによる」とだけ記載するのは不足です。労働日ごとの始業・終業時刻を明記するか、原則的な時刻を記載した上で、契約締結と同時に一定期間分のシフト表等を併せて交付する必要があります。 「休日」 具体的な曜日が確定していない場合でも、「毎週少なくとも1回」または「4週間を通じて4日以上」など、休日の設定にかかる基本的な考え方を明記しなければなりません。 3. 【令和8年6月改正】年次有給休暇の取扱いがより厳格に 今回の改正のポイントは、シフト制労働者の年次有給休暇(有給)に関する取扱いの具体化です。雇用契約の時点で明記された条件に沿った適切な管理が求められます。 ① 週の所定労働日数を算出しがたい場合の算出方法 「あらかじめ働く曜日や日数を約束していない」という場合であっても、以下の実績値を用いて「基準日における1年間の所定労働日数」とみなして、比例付与(週の所定労働日数に応じた日数)の有給を付与する必要があります。 雇入れから6か月経過時点: 最初の6か月間の労働日数の実績を2倍した日数 雇入れ1年6か月経過以降: 前年の労働日数の実績 ② 有給取得時の賃金計算 有給を取得した日に支払うべき賃金について、時間給の場合は、「有給を取得した日(本来シフトが入るはずだった日)の所定労働時間×時間給」の支払いが原則です。 ※実際の勤務日(シフト日)と所定労働日数が乖離しないよう、会社の一方的な都合で所定労働日数を増減させることは認められません。 4. シフトカットと「休業手当」の支給基準 経営状況の変動や店舗の繁閑により、会社側の都合でシフトを減らしたり、いったん確定したシフトをキャンセルしたりした場合、「使用者の責に帰すべき事由」による休業として、平均賃金の6割以上の休業手当の支払い義務が発生する場合があります(労基法第26条)。 シフト確定前の段階であっても、「目安となる労働日数(例:月15日程度勤務)」等が労働契約で定められている場合、それに満たない日数を一方的に減らすことは休業手当の対象となり得ます。 シフト確定後のキャンセルは、労働条件の「一方的な変更」にあたるため、原則として労使双方の合意が必要です。 5. 円滑な運用のための「シフト管理ルール」の明文化 労使双方にとって予見可能性を高め、円滑な現場運営を行うためには、労働契約書や就業規則において、あらかじめ以下のような「シフトの作成・変更ルール」を話し合って合意し、明文化しておくことが望まれます。 シフト決定の通知期限と方法(例:毎月〇日までにメール等で通知する) シフト変更・キャンセル時の変更申請の手続と期限 一定期間中の「上限となる労働日数・目安となる労働日数・最低限の労働日数」 近年、労働基準監督署による調査等でも、パート・アルバイトの雇用管理状況や有給の管理体制、休業手当の支払状況は重視される傾向にあります。 法的なルールを整備することは、トラブルを防ぐためだけでなく、働く方が安心して力を発揮できる環境を整え、人手不足時代における優秀な人材の定着(リテンション)を促すための、企業経営における大切な取り組みの一つと言えます。 今回の最新改正を踏まえた雇用契約書の見直しや、現場の実態に即した就業規則の改定、 労務管理に関する専門的なサポートを行っております。 ■ 関連リンク いわゆる「シフト制」について|厚生労働省 ホーム|厚生労働省

  • 【行政最新トレンド】永住・長期滞在の要件へ?「日本語・生活学習プログラム(仮)」法務省PT報告書を読み解く

    令和8年7月3日、法務省は外国人が日本の制度やルール、日本語を体系的に学ぶ新制度の検討に関する「法務大臣政務官PT報告書」を取りまとめ、公表しました。 現在、我が国には410万人を超える外国人が在留していますが、一部のルール逸脱行為などが社会課題となる中、国が責任を持って「責任ある社会の一員」を育成するための社会基盤(インフラ)を作ろうという、非常に大きな動きです。 今後の外国人雇用や在留資格の手続きにおいて、すべての経営者・担当者が知っておくべき重要な方向性を客観的に整理します。 新プログラム創設の目的と背景 これまでも政府は動画やガイドブック(生活・就労ガイドブック等)を提供してきましたが、それらはあくまで「任意」の学習にとどまっており、認知度や学習の動機付けに課題がありました。また、受け入れ地域(地方公共団体)や企業による支援の水準に格差があることも指摘されていました。 今回の報告書では、これらを発展的に解消し、「国の責任」においてICTやAIを活用した双方向型の体系的プログラムを提供することが示されています。 実務上、最も注目すべき「在留審査への反映」 経営者や担当者、そして外国人本人にとって最も影響が大きいのが、この学習プログラムの受講状況が「在留審査の許可要件」として組み込まれる方向で検討されている点です。 特に以下の3つのタイミングでの反映が議論されています。 入国前・入国直後の初期審査 日本での生活に最低限必要な基礎ルールを学ぶため、入国前や入国後一定期間内の受講を求め、その状況を在留期間更新許可申請などの審査に反映させて早期受講を促す。 永住許可申請の要件化 我が国への永住許可申請を行う際、この学習プログラムの受講を「許可要件」とする方向で検討が進められています。 長期滞在(10年超)の在留申請への反映 永住申請をあえて行わずに10年を超えて長期滞在する外国人に対しても、一定の長期滞在を目的とする在留申請の際に、プログラムの受講を要件化することが検討されています。 さらに、永住許可や帰化の審査においては、単に「受講したかどうか」だけでなく、「内容をどれだけ理解しているか(理解度の確認)」まで踏み込む慎重な制度設計がなされる見込みです。 企業(受入れ機関)に求められる役割の強化 国が共通のICT教材やオンデマンド環境を整備することを前提としつつも、雇用企業に対しては以下のような、より踏み込んだ対応が求められる方針です。 就労目的の外国人を受け入れる機関に対し、外国人本人だけでなく「帯同家族」に対する学習支援も一層強力に要求すること。 外国人が仕事と両立しながら受講できるよう、勤務時間の調整や学習環境の整備、地域の多文化共生窓口(地方公共団体の対面講座等)への橋渡しを行うこと。 今後の見通し 本プログラムは、国民の安全・安心を確保しながら外国人が活躍できる環境を作るための「喫緊の課題」と位置付けられており、「まずは実施可能なところ(短期的にはICT活用等)から早期に運用を開始する」という方針が示されています。 まずは十分な試行期間を設け、有識者や地方公共団体からのフィードバックを得ながら本格運用へ移行していくスケジュールが想定されています。 企業様が今後の法改正や在留資格の要件変更に慌てることなく、 安定した外国人財の確保・定着を進められるよう、公的な情報に基づいたナビゲーションを行ってまいります。 ■ 関連リンク 外国人が日本語や我が国の制度・ルール等を学習するプログラムの検討に関する「法務大臣政務官PT報告書」(令和8年7月) | 出入国在留管理庁 (※実際の入管庁URL構造に準拠した形式ですが、掲載時は公式ページをご確認ください)

  • 【実務トレンド】育成就労制度の最新動向:タイ王国との初の協力覚書(MOC)が締結されました

    2027年4月の「育成就労制度」のスタートに向けて、国(出入国在留管理庁、厚生労働省、外務省、警察庁)の動きが本格化しています。 令和8年6月4日、政府はタイ王国(労働省)との間で、育成就労制度に関する「協力覚書(MOC)」を締結したことを発表しました。 新制度において、人材の送り出し国と正式に覚書を交わしたのは今回のタイ王国が初めてとなります。 現行の技能実習制度から育成就労制度へ移行するにあたり、政府がどのような方針で国際的な枠組みを整えようとしているのか、公表された資料から重要となるポイントを客観的に整理します。 今回の協力覚書(MOC)が目指すもの 今回の合意の最大の目的は、日タイ両国が緊密に連携することで「育成就労外国人の保護」と「制度の適正な運用」を図ることにあります。 特に、これまでの技能実習制度において構造的な課題とされていた、高額な手数料を徴収する不適切な「仲介業者(悪質なブローカー)」を排除し、クリーンな受入環境を構築するための相互義務が明文化されました。 両国が約束した主な責務 覚書では、日本とタイの双方が適切なチェック機能を果たすための具体的な役割が定められています。 区分 主な約束・責務の内容 日本の省庁の責務 ・適切な監理支援機関の許可、および育成就労計画の認定を行う。 ・タイ側から不適切な受入企業(育成就労実施者)の通報があった場合は調査し、適切に対処する。 ・許可や認定の取消しを行った場合はタイ側に通知する。 タイ政府の責務 ・明確な審査基準のもとで「認定送出機関」の選定・管理を適切に行う。 ・日本側からの通報に基づき、不適切な送出機関への調査・指導を行う。 ・公的機関以外の勝手な送出機関の推薦を認めない。 実務上、特に注目すべき「重要なルール」 公表された別添資料(待遇基準や認定基準)を確認すると、今後の外国人雇用において、企業側および監理支援機関が遵守すべき「厳格なコンプライアンス」がより明確になっています。 人権侵害の定義(妊娠・出産による帰国の禁止) 契約において「妊娠・出産等を理由とした強制的な帰国」に関する条項を設けることは不適切であり、これらは人権侵害に該当すると再確認されました。これに違反した場合は、育成就労計画の認定取消しなどの対象となります。 費用の透明化と上限設定 外国人が認定送出機関に支払う費用は、「育成就労計画に記載された報酬月額の2ヶ月分を超えないこと」と明記されました。また、監理支援費などの経費を、直接的・間接的を問わず外国人に負担させることは明確に禁止されています。 不当な違約金契約の禁止 送り出し機関、受入企業、監理支援機関の間、あるいは外国人との間で、契約不履行に対する「違約金」を定めるような、不当に金銭の移転を予定する契約は一切認められません。 今後の見通し タイ王国との間で初の覚書が交わされたことを皮切りに、今後はベトナムやインドネシアなど、他の主要な送り出し国とも順次、同様の協力覚書(MOC)の締結が進んでいくものと予想されます。 2027年春の施行に向け、受入枠(受入れ見込数)の設定や各産業分野の具体的な規則など、今後も精緻なインフラ整備が進められていきます。当事務所では、企業様が安定した人事・採用計画を中長期的に組み立てられるよう、引き続き公的な情報に基づいたアナウンスをいたします。 なお、今回の発表に関する詳細な報道発表資料や覚書の仮訳(日本語)は、出入国在留管理庁の公式ホームページで公開されています。 ■ 関連リンク(一次情報) タイ王国との育成就労制度に関する協力覚書について | 出入国在留管理庁

  • 【令和8年度最新】人手不足を打破する!国の「リスキリング・人材確保」支援策を徹底解説

    当事務所のホームページをご覧いただきありがとうございます。 多くの経営者様や人事担当者様から、「新しい事業を展開したいが、対応できる人材がいない」「せっかく採用・育成しても、スキルの評価や処遇の基準が曖昧で、将来に不安を感じて離職されてしまう」といった切実なお声を日々いただきます。 いま、厚生労働省は「17の戦略分野」を中心に、企業のリスキリングや人材確保を強力にバックアップする方針を打ち出しています。 令和8年度からは新たなポータルサイトが始動するなど、国を挙げた支援体制はさらに本格化しています。 今回は、中小企業が今すぐ経営戦略に取り入れるべき「スキルの可視化」「助成金」「情報インフラ」の3つのポイントについて、専門家の視点から分かりやすく解説します。 1. 「キャリアラダー」で従業員のエンゲージメントを高める せっかく従業員がスキルアップしても、それが正当に評価され、給与やキャリアの向上に結びつかなければモチベーションは続きません。そこで国が今、最も力を入れているのが「スキルの可視化(キャリアラダー)」です。 〇 キャリアラダーの導入とは? キャリアラダーとは、職種ごとに「業務の習熟度」と「標準的な処遇(賃金)の幅」を はしご(ラダー)のようにステップ化したものです。 「何を学び、どのレベルに達すれば、どう処遇が上がるのか」が目に見えるようになるため、従業員が自社での将来像を描きやすくなり、エンゲージメント(愛社精神)の向上と離職防止に直結します。 現在、国は中小企業でも自前で無理なく導入・運用ができるよう、「標準キャリアラダー」や「導入支援ツール(作成支援シート、評価シート、ガイドライン)」の整備を進めています。 令和7年度調査対象: 観光(ホテル・旅館)、物流(トラック運転手・倉庫スタッフ) 令和8年度調査対象: 製造(電気機械、プラスチック、軽金属、金属プレス)、飲食(ファミリーレストラン) これらの業種に該当する企業様はもちろん、それ以外の業種であっても、社内の評価制度を見直す絶好の指標となります。 2. 財政的支援を受けながら進める「人材開発支援助成金」の計画的活用 従業員のリスキリングや外部研修には相応のコストがかかりますが、「人材開発支援助成金」を計画的に活用することで、研修経費や期間中の賃金の一部について、非常に手厚い助成を受けることができます。 中小企業が特に注目すべき令和8年度の主なコースは以下の通りです。 コース名 主な対象・訓練内容 中小企業の経費助成率 事業展開等リスキリング支援コース 新事業進出、DX(デジタル化)、GX(環境対応)に伴う研修 75% (※賃金要件等の達成でさらに加算あり) 人への投資促進コース 高度デジタル人材の育成、IT未経験者の即戦力化(OJT+OFF-JT)、定額制(サブスク型)研修の利用 60% 〜 75% (内容による) 人材育成支援コース 職務に関連した10時間以上の一般的な訓練、新卒者向け訓練 45% (有期実習型は最大100%) 💡 費用対効果(コストメリット)の試算例 例えば、ドローン事業など新事業やDXのために1人あたり30万円の外部研修(経済産業省や文部科学省の認定講座など)を受講させる場合、経費の75%(22.5万円)が助成され、 企業が実際に拠出する研修費は7.5万円に抑えられます。 さらに、研修を受講させている時間(1時間あたり800円〜1,000円)の賃金助成も支払われるため、研修期間中の社内コスト(稼働ロス)も相殺できる合理的な仕組みとなっています。 【重要な注意点】助成金の受給には、必ず研修を開始する前(原則1ヶ月前まで)に「訓練計画」を労働局に提出し、認定を受ける必要があります。事後の申請は一切認められませんので、スケジュール管理が極めて重要です。 3. 人事戦略の強力なリファレンス「みんなの労働ナビ」と「job tag」 令和8年3月、国は労働関連のあらゆる情報を一元化した総合データプラットフォーム 「みんなの労働ナビ」を開設しました。 これまで各サイトに分散していた「求人情報(ハローワーク)」「職場環境(しょくばらぼ)」「リスキリング・訓練検索」がワンストップで結びつき、非常に利便性が高まっています。 特に、職業情報提供サイト「job tag(ジョブタグ)」は経営者様や人事担当者様にぜひ一度ご覧いただきたいツールです。500以上の職業について、具体的な作業内容や求められるスキル、平均賃金などが客観的なデータとして「見える化」されています。 自社の求人票を作る際の「求める人物像(ペルソナ)」の整理 社内の職務定義や評価基準を作る際のリファレンス として、非常に信頼性の高いデータ基盤として活用できます。 まとめ:自社に最適な「攻めの人事戦略」を組み立てませんか? 国の支援策は非常に手厚くなっていますが、制度が複雑であるため、 「自社の今後の事業計画に対して、どのコースが最適なのか分からない」 「キャリアラダー(評価基準)を作りたいが、日常業務が忙しくて手が回らない」 「計画書の作成や労働局との調整、申請の手続きが難しそう」 と二の足を踏んでしまう経営者様も少なくありません。 助成金や人事制度は、単に「お金をもらうため」「形を整えるため」のものではなく、会社の次世代を担う人材を育て、組織を強くするための「投資」です。 当事務所では、貴社の経営ビジョンを丁寧にヒアリングし、最適な助成金の選定、事前の訓練計画書の作成・申請から、社内の評価制度(キャリアラダー)の設計まで、一気通貫で伴走サポートいたします。 戦略分野・社会インフラ関連分野の人材育成・確保を推進するための関係府省庁連絡会議|内閣官房ホームページ

  • 【2026年最新】第73回中央最低賃金審議会資料(6/23発表)が示す、過去最大「最賃引上げ」の裏に潜む3つの深刻な課題

    先日、2026年6月23日に開催された「第73回中央最低賃金審議会」の資料が公開されました。 そこでは、令和7年度の最低賃金改定について「全国加重平均1,121円、66円の増額」という過去最大の引上げ額となったポジティブな側面が注目される一方で、制度の運用面においてこれまでにない深刻な課題や歪みが浮き彫りになっています。 今回は、この最新の審議会資料から読み解く、最低賃金改定の舞台裏で起きていた「3つの論点」と今後の構造改革の必要性について分かりやすく整理していきます。 論点1:「最下位になりたくない」という心理がもたらした、地域実態との乖離 今回の審議で最も特徴的だったのが、39道府県で中央が示した目安額を上回る答申が出された点です。さらにそのうち11県では、目安を10円以上も上回る大幅な上乗せが行われました。 この背景にあるのは、近隣県との深刻な労働力獲得競争や、「他県の後塵を拝したくない(最下位を回避したい)」という心理的な駆け引きです。 ⚠️ ここにある課題 最低賃金は本来、「生計費」「賃金」「支払い能力」という法定3要素に基づくデータ重視の審議が原則です。しかし今回は、他県の動向を伺うために「審議日程を後ろ倒しにする」といった動きが見られ、本来の原則が損なわれかねない状況に陥っています。 💡 今後の対応方針 今後は、大幅な上乗せを行う場合にはその客観的な理由を明確に示すことや、前年度の引上げが地域経済に与えた影響を公労使(公益・労働者・使用者)でしっかり検証した上で翌年の審議を行う仕組みづくりが必要とされています。 論点2:「金額を上げる代わりに、実施を遅らせる」という異例のトレードオフ 今回、実務や労働現場で最も大きな議論を呼んだのが「発効日のばらつき(大幅な後ろ倒し)」です。 例年であれば10月中に発効されるのが一般的ですが、令和7年度は27府県で11月以降にずれ込み、さらに6県では令和8年1月1日以降まで遅れるという異例の事態となりました。 ⚠️ 金額と発効日の「交渉材料」化 ここから見えてくる実態は、「引上げ額(金額)を確保する代わりに、発効日を遅らせて経営側の負担を猶予する」という、いわば金額と発効日のトレードオフのような運用が行われたということです。 🚨 懸念されるポイント これにより、名目上の引上げ額は大きく見えても、実際に労働者の手元にお金が入る時期が遅れるため、実際の効果との間に大きな乖離が生じています。特に現在の物価高局面においては、実質的な生活下支え効果が低くなってしまうという本末転倒な問題が指摘されています。 論点3:労使双方への影響 〜温度差とモチベーションへの懸念〜 発効日の遅れは、経営側と労働者側で非常に対照的な影響をもたらしています。調査結果からもその温度差が見て取れます。 経営側(企業)の視点 約8割の企業は「特に影響はない」と回答。一部の企業からは「賃上げ原資の確保や、システム変更などの準備期間が確保できた」と肯定的に受け止める声もありました。 労働者側の視点 一方で、約3割以上の労働者が賃上げ時期が「遅れた」と実感しています。その中には、「仕事へのモチベーション低下」や「家計への悪影響」を直接訴える切実な声が一定数存在しています。 経営側にとっては猶予期間であっても、労働者にとっては日々の生活に直結する問題であり、職場のエンゲージメント低下につながるリスクをはらんでいます。 まとめ:単なる「金額の議論」を超えた構造改革のフェーズへ 今回の改定は、最低賃金の大幅な引上げという「目標」こそ達成しつつあるものの、そのプロセスにおいて「地域間格差の拡大」や「予見可能性の低下」といった新たな歪みを生む結果となりました。 ただ金額をいくらにするかという目先の議論は、すでに限界を迎えているのかもしれません。 今後は、従来の「A・B・C」といったランク区分のフレームワーク自体を見直すことや、EU指令などで示されている「賃金中央値の60%」といった国際的な指標を日本にどう落とし込んでいくかなど、より大局的かつ構造的な改革が求められている段階に突入したと言えます。

  • 人材の定着とリスキリングを両立させる「教育訓練給付金」の戦略的活用

    労働人口の減少と採用コストの高騰が続く現代のビジネス環境において、企業が持続的な成長を遂げるためには、「優秀な人材の確保・定着」および「既存社員のリスキリング (学び直し)」が最重要課題となっています。 しかし、「社内研修や外部スクールの費用を会社側で全額負担するのは財政的に厳しい」「他社との差別化を図るための原資が不足している」とお悩みの経営者様も少なくありません。 このような経営課題を解決する一手として、近年改めて注目されているのが、雇用保険制度の「教育訓練給付金(通常型)」の戦略的活用です。 本制度は、企業の直接的な金銭負担を伴わずに従業員の主体的スキルアップを促せる極めて有用な仕組みですが、その恩恵を最大化し、かつ企業の採用ブランディングへ安全に組み込むためには、法的なインフラ整備と専門的な労務管理が不可欠となります。 本記事では、経営層が押さえるべき本制度の構造と、社労士が関与すべき重要性について解説いたします。 Ⅰ. 人材投資と労務リスク管理を両立させる「通常型給付金」の特性 国や自治体が主導する一般的な組織向けの助成金とは異なり、通常型の教育訓練給付金は、従業員が「自身の休日」や「退勤後の時間」を利用して自主的に学習を進めるという性質を持っています。この仕組みは、企業側にとって以下のような労務管理上のメリットをもたらします。 1. 労働時間管理および割増賃金リスクの排除 会社の業務命令として研修を受講させる場合、その時間が法定労働時間外であれば「労働時間」とみなされ、企業には割増賃金(残業代)の支払義務が生じます。これに対し、通常型給付金は従業員個人の「主体的なキャリア形成(私的活動)」に準ずるため、受講時間に対する賃金支払い義務等の労務リスクを完全に排除した状態で、社内の人材レベルを底上げすることが可能となります。 2. 被保険者期間の維持による従業員の不利益解消 一部の休暇連動型給付金とは異なり、この通常型(スクール代補助タイプ)は学費そのものに対する支援であるため、従業員の雇用保険の被保険者期間(加入期間)を消費・リセットすることがありません。将来的な失業手当の受給権等に一切の不利益を及ぼさないため、 企業側としても労務トラブルの懸念なく、社内での受講推奨や制度案内を行うことができます。 Ⅱ. 企業の持続的成長に寄与する対象講座の広がり 法改正に伴うインセンティブの強化により、現在では条件を満たすことで受講費用の最大80%(年間最大64万円)が国から受講者本人へ直接支給されます。対象となる講座(約1万6,000以上)は多岐にわたり、次世代の幹部候補育成や組織のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に直結するメニューが網羅されています。 組織マネジメント・経営感覚の醸成: 「中小企業診断士」等のビジネス資格 業務効率化およびデジタル化の推進: 最新の「AI・DX活用講習」「データサイエンス講座」 事業活動に直結する専門技能: 「各種自動車免許(中型・大型等)」「各種専門国家資格」 販路拡大・マーケティング機能の強化: 「WEB・SNSマーケティング実務講座」 一見すると従業員主導で完結する利便性の高い制度に思えますが、これを企業の「福利厚生」や「採用の武器」として公式に機能させるためには、クリアすべき法的なハードルが数多く存在します。 1. 雇用保険の適正な加入状況(コンプライアンス)の厳格な審査 本制度の適用は大前提として「雇用保険の被保険者であること」が条件となります。「週20時間以上勤務しているにもかかわらず、手続きの不手際や認識不足により加入漏れが生じている」といった状態のまま会社が制度を推奨した場合、従業員が受給できないばかりか、遡及加入や行政指導といった重大な労務リスクに直面することになります。事前に社労士による厳密な帳簿・労働実態の監査(労務診断)を行うことが必須です。 2. 「業務命令」と「自主学習」の境界線を定める社内規程の整備 従業員が自主的に学ぶとはいえ、資格取得を人事評価や昇給の条件に組み込む場合、制度の設計次第では「事実上の業務命令」と判断され、後々になって過去の学習時間に対する残業代を請求されるといった法的トラブルに発展するリスクを孕んでいます。これを防ぐためには、就業規則(賃金規程・評価制度)や社内ガイドラインを法的に強固なものへアップデートしておく必要があります。 🔑 結論:攻めの人材投資を行う前に、まずは守りの労務診断を 「教育訓練給付金」をインフラとして活用した採用・定着戦略は、コストを抑えて組織を強化するための極めて有効なアプローチです。しかし、土台となる労務環境が不安定な状態では、思わぬ法的リスクを誘発する引き金にもなりかねません。 「現在の従業員の雇用保険の加入状況に法律上のミスのない確信が持てない」 「トラブルを未然に防ぎつつ、制度を自社の人事・評価制度に正しく組み込みたい」 「求人票の文面を精査し、他社の一歩先を行く採用ブランディングを構築したい」 当事務所では、企業の基盤を守る就業規則の改定や雇用保険の適正化から、攻めの人材育成の構築まで、総合的なコンサルティングを行っております。 制度の導入をご検討の経営者様は、トラブルを未然に防ぎ、最大の効果を得るために、 まずは一度ご相談ください。 教育訓練給付金|厚生労働省

  • 【2027年4月施行】技能実習から「育成就労制度」へ!企業が今すぐ知っておくべき変更点と実務の備え

    日本の外国人材採用において、今もっとも注目されている一大改革といえば「育成就労(いくせいしゅうろう)制度」の創設です。 従来の「技能実習制度」が発展的に解消され、新たな枠組みへと生まれ変わることが決定しています。施行予定は令和9年(2027年)4月1日。 「名前が変わるだけじゃないの?」と思っている方も多いかもしれませんが、中身は制度の根幹からガラリと変わる大改革です。今回は、この新制度の背景から、企業が今から準備すべき実務のポイントまで、分かりやすく徹底解説します! 1. なぜ変わる?「育成就労制度」誕生の背景と目的 新制度を理解するために、まずは「なぜこれまでの技能実習制度が廃止されるのか」という背景を押さえておきましょう。 技能実習制度が抱えていた「建前と本音」の課題 1993年に始まった技能実習制度は、もともと「日本の技術を途上国へ伝える(国際貢献)」という目的(建前)で創設されました。しかし実態は、深刻な人手不足に悩む日本企業を支える「労働力の確保(本音)」として機能してきた歴史があります。 この「建前と本音のズレ」から、以下のような構造的な問題が長年指摘されてきました。 原則として「転籍(転職)」ができない(人権侵害や低賃金労働の温床に…と国際社会からも批判) 実習終了後のキャリアパスが不透明(優秀な人材が日本に残りにくい) こうした課題を根本から解決し、外国人材の権利を守りながら、企業の「人手不足」にも堂々と応えられるように作られたのが、今回の「育成就労制度」です。 育成就労制度の基本概要 新制度の目的は、ズバリ「人材育成」と「人材確保」の両立です。 人手不足が深刻な特定産業分野(製造業、建設、農業、介護など)において、最長3年間の就労を通じてスキルをしっかり育て、その後は「特定技能1号」へスムーズにステップアップしてもらう仕組みになっています。 2. ここが違う!技能実習と育成就労の「5つの大変化」 「技能実習」から「育成就労」への移行による、雇用者側への影響が大きい5つの変更点をまとめました。まずは一覧表で比較してみましょう。 📊 技能実習 vs 育成就労 比較表 項目 従来の「技能実習制度」 新しい「育成就労制度」 制度の目的 国際貢献・技能移転(建前) 人材育成・人材確保(本音・実態に即す) 在留期間 最長5年 3年(その後、特定技能へ移行が前提) 転籍(転職) 原則不可 一定条件下(1年〜2年経過後など)で可能に 日本語要件 明確な基準なし 入国時:A1(N5相当)、移行時:A2(N4相当) キャリアパス 不透明 特定技能1号・2号への道筋が明確 各ポイントの詳細を掘り下げてみていきましょう。 ① 目的の明確化:労働力としての受け入れを「公認」 これからは「国際貢献」という建前をなくし、企業は「労働力を確保し、しっかり育てる」という本来の目的で堂々と受け入れができるようになります。その分、日本人と同等以上の適切な待遇や、計画的な育成環境を用意する責任がセットになります。 ② 転籍(転職)ルールの緩和【最重要!】 企業にとって最大の変更点がこれです。これまでは原則転職ができませんでしたが、新制度では「同一分野内であれば、1年または2年経過後に本人の希望での転職(転籍)」が認められる方向で検討されています。 企業側のリスク: 職場環境や待遇が悪いと、他社に逃げられてしまう。 企業側のチャンス: 他社で育った優秀な人材を中途採用できる。 今後は「外国人材から選ばれる職場づくり」が、採用成功の鍵を握ることになります。 ③ 日本語能力が「段階的な必須条件」に これまでは曖昧だった日本語力に、明確な基準が設けられます。 入国時: CEFR A1レベル(日本語能力試験 N5相当) 特定技能1号への移行時: CEFR A2レベル(N4相当) 現場での指示不足による安全事故や品質トラブルを防ぐためにも、企業側が「日本語学習をサポートする体制」を整えることが求められます。 ④ 「長期雇用」への明確なルート開通 育成就労(3年)を修了した外国人材は、試験が免除されて「特定技能1号」へ移行できます。さらにその先の「特定技能2号」にステップアップすれば、在留期間の上限がなくなり、家族を日本に呼ぶことも可能です。 つまり、「育成就労からスタートして、将来の会社の中核を担うリーダーにまで育て上げる」という長期的な人材戦略が組めるようになります。 ⑤ 監理体制の強化と受入企業の義務 受入企業には、これまで以上に「実質的な育成」が求められます。形式的な受け入れは通用しなくなり、以下のような実務負担やマネジメント体制の確立が必要になる見込みです。 受入前の詳細な「育成計画」の策定と提出 定期的(月次・四半期)な育成進捗の報告と評価 定期的な面談の実施と記録 日本語学習や技能試験に向けた計画的なサポート 労働条件や生活面に関する相談窓口の設置 3. 企業が今から準備すべき「実務上の4大ポイント」 2027年4月のスタートに向けて、企業はどのようなスケジュールで動けば良いのでしょうか?今から押さえるべき対策を解説します。 ① 「同一労働同一賃金」の徹底 新制度では、外国人であることを理由とした賃金格差は完全にNGです。日本人従業員と同等以上の賃金水準の確保はもちろん、技能レベルに応じた明確な「賃金テーブル(評価基準)」を社内に整備しておきましょう。 ② 信頼できる「監理団体」の選定 制度が変わっても、基本は監理団体(新制度での新名称・役割は今後詳細決定)を通じた受け入れが中心となります。特に製造業などの専門現場では、業界特有の安全管理や品質管理に理解があり、外国人材の母国語サポートが手厚いパートナー(団体)を今から比較・選定しておくことが重要です。 ③ 現役の「技能実習生」への経過措置 2027年4月の時点で、すでに自社にいる技能実習生については、実習期間が満了するまでは従来のルールが適用される見込みです(経過措置)。 ただし、彼らが実習終了後に「特定技能1号」への移行を目指す場合は、新しい日本語要件などが必要になる可能性があるため、今から日本語学習を支援しておくのがベストです。 ④ 2027年に向けた企業のロードマップ 新制度をスムーズに迎えるための、おすすめのアクションスケジュールです。 2025年度中: 育成就労制度の情報をキャッチし、自社の採用方針を固める 2026年前半: 伴走してくれる監理団体の比較検討・契約 2026年中: 社内の育成計画、指導担当者の配置、社内規程の整備 2026年後半以降: 現役実習生への日本語学習支援の強化 2027年4月〜: 育成就労制度による、新しい受け入れスタート! 4. まとめ:ピンチをチャンスに変える人材戦略を 育成就労制度への移行は、一見すると「転職リスクの発生」や「書類・手続きの手間(管理負担)の増加」など、企業側の負担が増えるように思えるかもしれません。 しかし長期的視点で見れば、「不適切な競合他社が淘汰され、人を大切に育てるホワイトな企業に優秀な外国人材が集まる」という、健全で大きなチャンスの到来です。 3年で帰国してしまう労働力ではなく、将来の自社を支える「戦略人材」として外国人材を位置づけ、計画的な育成投資を行っていきましょう

  • 【令和8年度版】これを見れば安心!業務改善助成金の申請スケジュールと全体の流れを徹底解説!

    皆さん、こんにちは! 生産性を高めるための設備投資や、従業員の賃金引上げを国がサポートしてくれる「業務改善助成金」をご存知でしょうか? 申請から支給までの「5つのステップ」を分かりやすく解説します! 業務改善助成金の全体スケジュール(5つのステップ) 業務改善助成金は、大きく分けて「申請前」「交付申請」「事業実施」「支給申請」「状況報告」の5つのフェーズに分かれています。全体の流れを順を追って見ていきましょう。 ステップ1:交付申請前(事前の準備) まずは、助成金を申請するための要件確認と、必要書類の準備からスタートします。 やるべきこと: 地域別最低賃金および、自社の「事業場内最低賃金」の確認 就業規則、賃金台帳、労働者名簿の整備・確認 導入したい設備やサービス(買いたいもの)の相見積書(あいみつもりしょ)の取得 重要な注意点: 対象となるのは中小企業です。 交付申請を行う前の「6か月間」に解雇(会社都合退職など)がないことが絶対条件となります。 ステップ2:交付申請(令和8年11月末日まで) 準備が整ったら、管轄の労働局(均等室)へ交付申請書を提出します。 申請期間: 令和8年9月1日から11月末日(または都道府県別の最低賃金改定日のいずれか早い日)まで 必要書類: 6か月分の賃金台帳、(相)見積書 など スケジュール目安: 申請後、約3か月で「交付決定」が下ります。 ⚠️超重要ポイント: 必ず交付決定が出てから、賃金の引上げや、設備の受発注を行ってください。交付決定前に購入・契約してしまうと助成金の対象外になってしまいます。 ステップ3:事業実施(令和9年1月31日まで) 交付決定が下りたら、計画していた事業を実際に進めていきます。 期限: 令和9年1月31日までにすべてを完了させる必要があります。 やること: 50円以上の賃金引上げの実施 設備の「発注」「納品」「請求」「支払い(精算)」の完了 サービス実施時や納品時の写真撮影(※支給申請で証拠として提出するため、必ず撮影しておきましょう) ステップ4:支給申請(事業終了後1か月以内) 事業がすべて完了したら、労働局(均等室)へ「お金を振り込んでください」という支給申請を行います。 期限: 事業終了後1か月以内、または令和9年4月10日のいずれか早い日まで 必要書類: 賃上げ後の賃金台帳、出勤簿、就業規則、発注書、納品書、写真、請求書、支払いの証明(領収書や振込明細など) スケジュール目安: 支給申請後、約1.5か月で「支給決定」が下り、その後助成金が振り込まれます。 ステップ5:状況報告(最後の仕上げ) 助成金を受け取って終わりではありません。最後に、その後の状況を労働局へ報告する義務があります。 期限: 以下の①または②のいずれか遅い日から1か月以内に報告します。 ①賃金引上げ後の実績報告の前日 ②賃金引上げを行ってから6か月が経過した日 まとめ:計画的なスケジュール管理が成功のカギ! 業務改善助成金は、設備投資の費用を最大で数百万円規模でサポートしてもらえる大変ありがたい制度です。 しかし、今回のスケジュールにあるように「令和8年11月末日までの交付申請」や「令和9年1月31日までの事業完了」「就業規則改定」「帳簿作成」など、シビアに決まっています。 さらに、申請前に相見積もりを取ったり、実施中の写真を残したりといった細かいルールもたくさんあります。 「うちの会社でも使えるかな?」「スケジュールに間に合うか不安…」という方は、 ぜひお早めに! 業務改善助成金|厚生労働省 リーフレット業務改善助成金0.pdf

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